これは2008年に以前のブログへ投稿したエントリーを加筆、編集したものです。
何かを楽しむには、それなりの知識による裏付けが必要だ。あるいは、知識があれば尚楽しめる、と表現すべきだろうか。例えばワインを楽しむためには、次の知識が必要だ。
- 産地、産地ごとの特色
- 風味
- 味わい方
さらに楽しみの対象は、ワイン・ボトルからラベルにまで及ぶ。
コーヒーも同じだ。コーヒーの場合には、さらにユーザー自ら実践する楽しみが加わる。STARBUCKSでは、そのようなコーヒーの楽しみ方を教えてくれるセミナー*1を開催している。初級~上級のセミナーとは別に、特定店舗に限定したセミナーも開催されている。
今回は、銀座マロニエ通り店のテイスティング、ブレンドのセミナーに参加した。
セミナーの内容は、次のようなものだ。
- STARBUCKブランドのコーヒー豆、12種類をテスティングする。
- それらを組み合わせてオリジナル・ブレンドを作る。
前提知識を求められることはないのだが、事前に初級*2、中級*3のセミナーはこなしておいた方がよい。理解も深まるし、楽しみの幅も広がる。
初級、中級と異なるのが「テイスティング」だ。このセミナーでのテイスティングは、コーヒー豆のバイヤー、ブレンダーの方法と同じものだ。厳密には、カッピングと呼ばれる。その方法とは、
目安の分量
コーヒー豆 | 10g |
お湯 | 180CC |
ペーパー・ドリップでもないし、エスプレッソ・マシンも使わない。コーヒー豆に直接お湯を注いで、抽出する。直接お湯を注いだものを味わうことで、コーヒー豆独自の癖も含めた、香りと味わいをダイレクトに堪能することになる。
つまり、これまでのテイスティングはコーヒー楽しむための味わい方であるのに対し、カッピングはコーヒー豆の良いところ、悪いところも含めた特徴を把握するための味わい方だ。
ただ飲み比べ、コーヒー豆を比較するだけでは終わらない。その特徴を覚えておかなければならない。ここで覚えた風味、感覚を基に、オリジナル・ブレンドの開発に挑戦することになる。それは続くブレンドを成功させるための情報収集でもあるのだ。
ブレンドの開発は、次の工程を経る。
ブレンドの印象とは、味わいの特徴だ。
- 切れのあるクリアさ
- 濃厚だけど滑らか
- ふんわりした香り+パンチの強い味わい
などなど、ブレンダーが求めるコーヒーの印象を決める。
ブレンド作業とは、この印象を再現するために適したコーヒー豆の配分を追及する作業だ。
この印象を再現するための配分として、3つのポイントがある。
ベース | ブレンドの基本 | ブレンド全体の約半分の分量を占める |
キー | ブレンドを特徴づける風味 | 独特な風味を持つコーヒー豆を用いる |
アクセント | ※オプション 特徴の引き立て役 |
独特な風味を持つコーヒー豆 ロースト加減の違い |
ベースは、そのブレンドの基本となる部分だが、風味の特徴を決定する部分ではない。バランスを決める部分だ。STARBUCKSで販売されている〇〇ブレンドの大半は、ブレンドに中南米のコーヒーを多用している。例えば、グアテマラ アンティグアだ。
そのブレンドを特徴づけるのが、キーとアクセントだ。特徴的、独特な風味を持つコーヒーを割り当てる。STARBUCKSのブレンドは中南米ベースなので、変化を付けるためにアフリカ、アラビア、東南アジアの特徴的なものを採用する。
同時に味わい、風味に印象を残す要素として、アクセントとなるコーヒー豆を検討する。ブレンドは2~3種類のコーヒー豆で構成するのが定石と言われており、基本はブレンド+キー、アクセントはオプションだ。
オプションを加えることによって、ブレンドの特徴が引き立つ、キーとは異なる後味を残すことで、ブレンドに有意義な変化、印象を添えることができる。
私は、このように実践してみた。まずブレンドの印象を決める。お茶を思わせるフローラル感のあるクリアさを求めた。これがキーだ。同時にコーヒーを飲んだ満足感を残したいとも思った。風味が淡いのは良いのだ、しかし薄いのはダメなのだ。これがアクセントとなる。
口に含んだ印象は、お茶のようなフローラル、クリアさを感じる風味が勝り、飲み込んだ後には深煎りの印象、コーヒーを飲んだ満足感が残る。そのような風味、味わいを追求したオリジナル・ブレンドが仕上がった。
ブレックファースト ブレンド | 5 |
スラウェシ | 4 |
イタリアン ロースト | 1 |
同席者達のオリジナル・ブレンドにも印象に残るものがあった。この講習の基本に忠実、模範解答的なブレンドがこれだ。
グアテマラ アンティグア | 6 |
エチオピア シダモ | 3 |
アラビアン モカ サナニ | 1 |
いわゆる普通のSTARBUCKSコーヒーに、特徴的な風味をトッピング的に添えたような印象のブレンドだ。
おそらく「今日のコーヒー」的にエチオピア シダモを注文すれば、それは好き嫌いが分かれると思うのだ。無難にグアテマラ アンティグアの1杯に、エチオピア シダモの風味が添えられていると、飲みやすいのだが無難すぎるコーヒーに、少し違う特徴的な一味を加えることができる。
そして、あえてアンチ模範解答的でありながらも、成功しているのが次のブレンドだ。
エチオピア シダモ | 5 |
スラウェシ | 2.5 |
エスプレッソ ロースト | 2.5 |
特徴的なエチオピア シダモがベースとなり、エスプレッソ・ローストがいわゆる「コク」を添えている。スラウェシは風味に貢献するというよりも、エチオピアの風味を緩和、相殺すると同時に、風味を殺さずにコーヒーを「薄める」作用を果たしている。特に酸味が抑えられるのだ。
これをエチオピアの風味を殺している、と解釈するか、引き立てていると解釈するかは、各人の好みによって分かれることだろう。
ワインと異なり、コーヒーのブレンド、テイスティングは生活に気軽に取り入れることができて、毎日でも手軽に楽しめるのが良い。
ちなみにSTARBUCKSでは、合計10になる分量で指定することで、このようなオリジナル・ブレンドとしてコーヒー豆を量り売りしてくれる。