これは2007年に以前のブログへ投稿したエントリーを加筆、編集したものです。
何かを楽しむには、それなりの知識による裏付けが必要だ。あるいは、知識があれば尚楽しめる、と表現すべきだろうか。例えばワインを楽しむためには、次の知識が必要だ。
- 産地、産地ごとの特色
- 風味
- 味わい方
さらに楽しみの対象は、ワイン・ボトルからラベルにまで及ぶ。
コーヒーも同じだ。コーヒーの場合には、さらにユーザー自ら実践する楽しみが加わる。STARBUCKSでは、そのようなコーヒーの楽しみ方を教えてくれるセミナー*1を開催している。セミナーは、1回3000円で受講できる。初級から上級まで受講すると、修了証を発行してくれる。
今回は、その中級編に参加した。
中級編の主題は、初級編*2と同じく基礎知識とペアリングだ。しかし、一歩踏み込んだ内容となっている。次のような具合だ。
- 風味、コクとは?
- 鮮度による味の違い
- コーヒーと付け合わせの楽しみ方。
いわゆるグルメの話題、感想で散見されるのが「コクがある」という表現だ。コクとは何だろうか。このセミナーでは、次のように定義している。
舌の上で感じる重量感
重量感と定義するほどなので、それが指しているのは重さに通じる感触だ。
コクがある | 濃厚な感触 ドロッとした感触 |
カラメル ハチミツ バター 生クリーム |
コクがない | 水っぽい軽さ 口の中に広がっていくような感触 |
甘味料 スキム・ミルク |
風味とは、舌で感じる味覚と嗅覚から感じる味わいの印象を指すのは一般的な事柄だが、味覚で感じられるのは4~5種類(うま味を含めるか含めないか)の刺激であるのに対して、嗅覚で感じられるのは8000にも及ぶという。これは意外な話題だった。
セミナーではまず、鼻をつまんでグミを味わう。鼻をつまんでいる限り、感じられるのは舌の上の刺激だけだ。鼻のつまみを外した途端、風味が口中に広がっていく感触が得られる。この嗅覚で感じる風味、口から鼻に抜けるときに感じる風味が、テイスティングにおいては特に大切なのだ。
鮮度による味の違いを体験するため、2杯のコーヒーを飲み比べる。一方は挽きたての豆から、もう一方は挽いてから2週間置いた豆から抽出したものだ。これも興味深い体験だった。
前者に比べて、後者の風味は相対的に落ちるのは想像に難くないところだが、飲み比べすることで、鮮度が何に対して影響しているのかを、具体的に知覚することができる。苦味が強くなるのだ。
コーヒー豆本来の風味を楽しむならば、挽きたての豆を抽出するのが理想的だ。とはいえ、鮮度が劣るから何かが「損なわれている」、結果として不味い、というものでもない。その苦味はコントロール可能なものであり、調節もできるのだ。例えば、ミルクを足す、苦味に合う付け合わせを添える、といったアレンジに向いている場合もある。そして、この付け合わせが、中級編の肝となる話題に通じている。
コーヒー豆の飲み比べと同じく、ペアリングでも飲み比べてによる知覚の変化を体験する。2種類のコーヒーを、レモン・ケーキ、チーズ・ケーキと組合わせて、お互いの味わいの変化を確かめる。意外なのは、薄口な味わいが、必ずしも濃厚な味わいに負けるわけではない、ということだ。
コーヒーは、次の2つだ。
エチオピア・シダモ | 味わいは軽め 独特な風味、香り |
スラウェシ | 癖のない、軽い飲み口 |
これらをレモン・ケーキを合わせる。エチオピアの場合、後味にレモン・ケーキの風味が残る。一方、スラウェシでは、洗い流してしまうように後味が残らない。
またチーズ・ケーキと合わせると、濃厚さに負けてしまい、エチオピアは風味が感じられなくなるのに対して、スラウェシは味わいが感じられるのだ。
ペアリングの相性とは、お互いの風味が感じられること、損なわないことが大前提だ。つまり、
- エチオピアにはレモン・ケーキが合う
- スラウェシにはチーズ・ケーキが合う
ということだ。
このような味わい方、風味の変化を体験することで、新しい世界を発見したような感覚を覚える。何かに開眼する、とはこのような経験を指すのだろう。
余談
STARBUCKのコーヒー豆ラインナップは、2007年当時から大きく変化している。一番の変化は、一般的なパッケージ売りから特定品種が姿を消し、ブレンドが主体になったことだろう。
驚きなのは、その姿を消した品種が店舗限定の高級品になってしまったことだ。かつては一般パッケージで販売されていたスラウェシも、今や限定店舗のみ取扱いの高級品だ。
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