この投稿は、2005年に以前のブログへ投稿したものへ加筆、再編集したものです。
横山宏というアーティストがいる。古くはポカリスエットのテレビCMや教育番組、テレビゲームに登場するクリーチャー、メカのデザインや、NIKEとの関りなど、本業はアーティスト、デザイナーだ。
世間一般にはモデラーとして知られているのかもしれない。その代表作が、現在の『M.a.K.』(マシーネン・クリーガー)、かつての『S.F.3.D』だ。
今回紹介する書籍は、『M.a.K.』の原作をMacで作画したCGでコミック仕立てにした、グラフィック・ノベルだ。かつてデジキューブ社から出版されていた作品だが、同社の破産に伴い、大日本絵画が再版した。
再版に伴い、メジャー・ヴァージョン・アップとでも呼ぶべき変更が加えられている。
- 大幅な加筆修正
- 紙面構成の変更
- 印刷品質の向上
- デジキューブ版未収録エピソードの追加
再版に際し、大日本印刷版は読みやすさの向上、そのための構成をかなり意識したようだ。その結果が再版に反映されている。
これほどの変更が成立するほど、実際のところ、デジキューブ版は存在だけでなく、構成そのものがマニアックだった。
「バンド・デシネ」と称しているように、フランス語圏のアート志向の強いコミック的な構成だった。小回りはストーリの流れではなく、視覚的な印象を意識した構成で、ストーリー的な何かを意識させはするものの、あまり「理解させる」、「読ませる」内容ではなかったのだ。
非公式ながら、このような解説サイトまで存在していた。
www.ceres.dti.ne.jp
この書籍はコミックなのだが、その本質的な実態は登場する兵器の模型だ。有機的な曲線でまとめられた形状は、どことなく愛嬌を感じさせるのだが、そのところどころに挿入されるむき出しの機構、装置、武装が、スパイス的な毒として作用し、何とも言えない奇妙な渋さ、カッコよさを演出している。
典型的なのが宇宙用SAFS、その偵察型だ。洋式便器に手足を取り付けたような形状に、むき出しの推進装置、突き出したレドームとプロペラント・タンクが混在した一体感は、なんとも魅力的なのだ。