CNN Moneyにビル・ゲイツの作業環境についての記事*1が掲載されていた。2006年4月7日の記事なので、マイクロソフトでのフルタイム職を辞した2年前の環境ということになる。どのような道具を、どのように活用しているのか、に興味を持って記事を読んでの感想は「意外と普通」というものだった。これはかつてのブログに投稿した時点での感想だ。
マルチ・スクリーンを作業環境に提供する組織は、今や珍しいものではなく、在宅勤務のために同様の環境を自宅に構築しているユーザーも存在するだろう。あるいは高解像度、大画面が普及し、1画面で同様の環境を実現することもできる時代になった。
しかし、あらためて気づくのは、根本的な本質は何も変わっておらず、
- 効率ではない
- 重要なことへの集中
ということの再認識だった。加えて、時を経たからこそ気付いたのが、ビル・ゲイツの先取の姿勢だ。
まずビル・ゲイツが使用するハードウェアだ。
3台のモニタには次の画面が表示されているのだという。
左 | メール一覧 |
中心 | メールの編集画面 |
右 | webブラウザ |
使用しているソフトウェアは、すべてMicrosoft製品だ。これは仕事場=Microsoftオフィスで支給されるものだと考えれば、当然のことだろう。
- Outlook
- SharePoint
- OneNote
- Office Communicator
だから自ずと、Outlook + SharePointで仕事をすることになる。主に次の3機能を利用しているという。
- メール
- フィルタリング(メールの自動振り分け)
- オンライン・カレンダー
その目的は、最も重要なことに時間を費やし、集中することであり、効率ではない。
We're at the point now where the challenge isn't how to communicate effectively with e-mail, it's ensuring that you spend your time on the e-mail that matters most. I use tools like "in-box rules" and search folders to mark and group messages based on their content and importance.
Staying focused is one issue; that's the problem of information overload. The other problem is information underload. Being flooded with information doesn't mean we have the right information or that we're in touch with the right people.
SNSによる情報過多だけでなく、時間と集中が浪費される現在、情報断捨離、断食的なことがライフハックとして語られることがある。2006年の実践スタイルでありながら、やはり本質は今も昔も変わらないのだ。
ただし一点、一般人には真似の難しいことがある。アシスタントによる人力フィルタリングだ。
I get about 100 e-mails a day. We apply filtering to keep it to that level e-mail comes straight to me from anyone I've ever corresponded with, anyone from Microsoft, Intel, HP, and all the other partner companies, and anyone I know. And I always see a write-up from my assistant of any other e-mail, from companies that aren't on my permission list or individuals I don't know. That way I know what people are praising us for, what they are complaining about, and what they are asking.
我々一般人が、これを真似しようと思えば、端的には、付き合う人、時と場所を選ぶ必要がある。あからさまに人間関係を取捨選択するのではなく、ビル・ゲイツのように目的に適った”permission list”を用意し、時と場所に応じてコミュニケーションを制限するのが現実的な方法だろう。
最後にタブレットだ。最初のMicrosoft Surfaceが発売されたのはビル・ゲイツの退職後、2012年のことだ。ここで言うタブレットPCとは、具体的にはこれ*2を指している。
当時、タブレットPCは現在のように一般的なものではなく、性能も機能も圧倒的にノートPCに劣っていた。使用するユーザーも非常に限定的だった。このような機器を、当時のビル・ゲイツは次のように利用していた。
I bring my Tablet PC. It's fully synchronized with my office machine so I have all the files I need. It also has a note-taking piece of software called OneNote, so all my notes are in digital form.
まだiPhoneも登場しておらず、当然iPadの概念も存在しない時代に、現在でのiPad+ペン入力に相当する使い方をしていたのだ。
Surfaceを設計したのはビル・ゲイツではないのだが、Surface ProやSurface Book、そしてSurface Laptop Studioのように、ノートPC+タブレットという形態はビル・ゲイツの意図、考えから派生し、暗黙に継承されている路線なのかもしれない。