Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

ゴジラ-1.0

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山崎貴監督と言えば、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』での悪評のため、たとえ観たくなる作品であっても、事前の注意を怠らず、不用意にチケットを買わない、そのようなブランドと化してしまっていた。

だから『ゴジラ-1.0』も警戒していた。しかし今回は、何も警戒する必要はなかった。『シン・ゴジラ』同様、オリジナル路線のゴジラであり、ビキニ環礁の水爆実験から1年後の1947年、警察予備隊すら発足(1950年)していない東京を舞台としていながら、1954年、1984年の『ゴジラ』を踏襲する要素があったり、ファンを喜ばせる諸々の要素が盛り込まれていたり、とても満足できる観賞体験だった。

暗喩としてのゴジラから、意識的に人間を襲ってくる存在としてのゴジラ

そもそもゴジラ核兵器と戦争の暗喩だ。ビキニ環礁の水爆実験に巻き込まれた報復として、都市を襲い、災厄をもたらす。そのような設定や背景はともかく、これまでのゴジラは、そのような象徴的な存在ではなく、超然とした自然災害的な印象があった。

今回のゴジラが自然災害的でないのは、意識的に人間を襲ってくる存在として描かれていることだ。手当たり次第に都市を破壊し、その場の人間が巻き込まれるのではない。意識的に人間を襲い、その一環で都市も破壊するのだ。その象徴となっているのが放射能火炎だ。

放射能火炎、被爆した東京、そして世界公開

今回、核兵器の暗喩として真正面から描かれたのが、劇中では「熱線」と呼称されている放射能火炎だろう。放たれるとクレーターを残すほどの爆発が生じ、爆風は衝撃波となって拡散する。その後、爆風は爆心地側へ逆流し、爆心地にはキノコ雲が立ち上る。そして放射能を帯びた黒い雨が降る。核爆発によって生じる現象を、ここまで具体的に描写したゴジラ映画は、今作が初めてだ。
劇中ではサラッと触れているだけだが、実際には銀座だけでなく主人公たちも被爆している。ラスト、典子の首筋に現れる黒い影は、その暗示だろう。

おそらく現象の描写だけにとどめたのは、海外展開を意識してのことではないかと勘繰ってしまう。本作は来月、12月1日に世界公開されるのだ。劇中の舞台設定とともに、米ソの助けを借りず、日本人の、それも民間人だけで打倒する展開も、世界へのアピールを意識してのことではないだろうか。

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オマージュ要素:電車を咥えるゴジラテレビ塔実況、そして上陸は2回

1954年『ゴジラ』では浜松町付近で電車を咥え、1984年『ゴジラ』では有楽町で新幹線を咥えようとしてポイ捨てし、『シン・ゴジラ』では東京駅でそれらをぶつけられる。
初代から続くオマージュ要素は、今作でも健在だった。予告編に登場する電車のシーンだ。やはり銀座で電車を加える。ビル屋上からの実況放送は、1954年『ゴジラ』に登場するテレビ塔実況のオマージュだ。

いつもゴジラは2度、上陸する。1954年は、2回とも東京湾から。1984年は静岡、そして東京。『シン・ゴジラ』では東京湾、そして鎌倉方面から上京。今回は東京湾、そして小田原だ。

そして撃退作戦で泡に包まれるゴジラも、ある意味では1954年『ゴジラ』のオマージュ、あるいはオキシジェン・デストロイヤーの泡に包まれた現実的アレンジだろう。

ちなみに相模湾は、日本三大深湾の一つだ。本当に深い。

結局、ゴジラ好きが撮った『ゴジラ』が最高

ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』のキャッチは「君を、生きろ」だった。そして、劇中で語られる「大人になれ」に関連する諸々の表現が、悪評に通じていた。しかし『ゴジラ-1.0』のキャッチ「生きて、抗え。」をはじめ、劇中で語られる事柄は、本質的には「ドラクエ」と変わりないように、私には見える。
「誰かが貧乏くじを引く」とか、日本の民間人で解決してしまう展開は、結局、自分(達)で何とかしろ、という「大人になれ」的な要素に通じるものだ。しかし、今のところ『ゴジラ-1.0』は大絶賛で迎えられているように見える。

ゴジラ-1.0』は、「ドラクエ」とは全く似ても似つかないストーリーだし、その悪評から山崎監督自身が、地雷を避けることを学んだということではなさそうだ。おそらく、山崎監督自身がゴジラ・ファンである、という点が「ドラクエ」とは全く違う結果をもたらした主因ではないだろうか。

思えば、これは一度見た光景だ。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を監督したマイケル・ドハティもゴジラ好きだった。キングギドラが蹂躙する舞台を、その足元の視点から撮影していた場面は、今作の銀座上陸シーンに相通じるものがある。おそらく、好きなもの同士、考えることは似てくるのだろう。
そして、好きなもの同士だからこそ、本質的に変わりない主題でありながら、観客もまた作品を受け入れてしまうのだろう。

ゴジラ好きとして、楽しめる作品だった。

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