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Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

グリッドマン ユニバース

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『SSSS.GRIDMAN』*1は良かった。実写特撮をモチーフとして、その演出的な特徴、大雑把な粗さをも昇華させ、センスを感じさせる絵作りで、とても魅力的な作品だった。その関連作品である『SSSS.DYNAZENON』も、そのシナリオと展開に中途半端さを感じながらも、特に主人公たちとその周囲の空間、雰囲気にセンスを感じる、こちらも魅力的な作品だった。
そのような印象から、両作がクロスーバーする映画作品『グリッドマン ユニバース』に対する期待は勝手に高まってしまったのだが、結果として期待が現実を上回ってしまった。

共通の作品背景を持ちながらも世界(ユニバース)の異なる両作は、材料もつくり方もほとんど変わらない、異なる料理といったところだろう。『~GRIDMAN』がビーフ・シチューだとすれば、『~DYNAZENON』はクリーム・シチューといったような。おそらく『グリッドマン ユニバース』を気に入った観客からすれば、二つの材料を、やはり変わりのない方法で調理した料理、例えばカレーや肉ジャガが出てきた様に感じたかもしれない。しかし私からすると、出されたのはビーフ・シチューとクリーム・シチューを、ただ混ぜただけのものように感じたのだった。

マーブル上に混ざり合ったそれぞれの特徴的な箇所、それぞれの良いところは、その都度感じ取ることができるのだが、クロスオーバーだからこそ、映画作品だからこそ、といった本作特有の何かが全く感じられなかった。

マルチバース+メタ視点の構造、しかしただ混ぜただけ。

グリッドマンにより分岐して生じたマルチバースにて、異なるバース同士の相互干渉によって『~GRIDMAN』の世界に『~DYNAZENON』の登場人物たちが紛れ込んでしまった。問題自体はマルチバースにおける問題なのだが、その問題解決が『~GRIDMAN』の世界で展開する。そこへ、

  1. 『~GRIDMAN』を題材にした劇中作
  2. 『~GRIDMAN』で挿入された現実世界

をも介在することで、メタ視点の構造を持った展開を作り出している。面白い展開を作り出せそうな構造でありながら、それを活かしきれていなかったように感じた。

劇中作の台本、その作品がまさに目前で展開している映画『グリッドマン ユニバース』に通じる仕掛けなのではないか、というのは作品を観ながら形作られたアイデアの一つだったが、全くの思い違いであり、無関係でもあった。それは学園生活を演出するための題材のようなもので、特に必要性のある仕掛けでもなかった。

これが冒頭のシチューのたとえに通じている。ただ全てを登場させただけ、つまり混ぜただけなのだ。

必然性の無さと、ファン・サービス

ファン・サービスとして画面の端々に、様々な作品との関連を示したり、オマージュを示唆する仕掛けが盛り込まれることがある。しかしファン・サービスは味付けの主役にはなり得ず、あくまでもスパイス的な演出の一部だ。

そういえば沢蟹を食べたり、カニカマを食べたり、ガウマはカニが好きだった。しかし渡り蟹から5000年ぶりの再会に繋げる展開も、取って付けたようで何も必然性を感じなかった。
ガウマが5000年の眠りから復活した理由の一つが、姫との再会だった。それは『~DYNAZENON』では結実しなかったのだが、マルチバース干渉の副作用として念願が叶ったのだとしても、それはファン・サービスとしても無理やり過ぎはしないだろうか。

しかしもう一方の念願成就には、ファン・サービス以上の必然性を感じた。新庄アカネの想いだ。

新庄アカネの想いの成就

グリッドマン ユニバース』は両作のクロスーバーというよりも、『SSSS.GRIDMAN』の続編の要素が強い。それを強く印象付けたのが、次の二点だ。

  • 現実世界の新条アカネの登場
  • 仮想世界の宝多六花との接触

現実世界からの干渉によって、再び新条アカネは宝多六花と接触することができた。アカネの触れた六花の髪の毛が、新条アカネ(アバター)の髪色へ変化する。

『~GRIDMAN』で現実世界の新条アカネは、理想の自分自身を反映したアバターとして仮想世界に降臨し、同時に現実の自分の外見を似せた宝多六花を想像した。同時に、理想のボーイフレンドとして響裕太も創造した。本来の意図は自分自身に対しての恋人とすることなのだが、響雄太が心惹かれたのは現実世界の分身たる宝多六花であり、理想の実態としての化身である新条アカネではなかった。
響雄太から宝多六花への告白は、本来の自分が望んでいた成行であり、新条アカネとして第三者的に見守りながらも、現実世界の新庄アカネの想い、気持ちも成就、解消されたことだろう。それを暗示していたのが、その髪の毛の輝きだ。

ここまでの伏線と展開には、ガウマの場合のように取って付けた無理矢理さがなく、自然な流れと演出が見事だった。

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