Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

MSX POCKET BANK 8 プログラムD.J.

今年はMSX40周年*1なのだという。ITエンジニアをはじめ、現在活躍中の人たちの中には、幼少期にMSXに触れた人たちも多い。またMSXの発案者である西和彦は、IoT機器やスーパーコンピュータとしてMSXを蘇らせようとしている。*2

さらにその一環として、往事のMSX関連書籍、雑誌までも復刻させようとしている*3。その中にはMSX POCKET BANKシリーズも含まれていた。
そして同シリーズ中、最も異彩を放っていて、印象的だったのが「プログラムD.J.」だった。


当時はITエンジニアという職種が一般的ではなく、現在で言うところの「技術書」も、より専門書に近い存在だった。一方、そのような技術書からすると、よりカジュアルな出版物として、読者自ら手入力する前提でプログラムが雑誌や書籍として流通していた。このようなプログラムの内容は、プログラミング・テクニックの実践からゲーム開発まで様々だった。

ところが「プログラムD.J.」が異なっていたのは、プログラムを入力し実行するまで何が起こるのか分からないような、少々前衛染みた抽象表現から、何かしているような雰囲気の「演出」まで、プログラムによる非実用的な楽しみ方を前面に押し出していることだった。
顧みれば、それは80年代バブルを背景としたポップさと軽薄さ、その結果として生じた精神的なゆとり、余裕だったのかもしれない。現在では、そのような無駄は受け入れられないか「マネタイズ」の出汁にでもされるのではないだろうか。

ラジオ局としてのプログラム集

”D.J.”というのはラジオ局のディスク・ジョッキーを指しており、架空の南国FM放送局をイメージしている。その番組が、それぞれのプログラムという設定だ。だから目次は、その番組表ということになる。

それぞれのプログラムには楽曲が併記されている。現在のFM局のwebサイトには放送中の楽曲が表示されていることがある、まさにその感覚だ。その楽曲のイメージでプログラム入力するにせよ、そのプログラムを実行しながら聴くにせよ、ただプログラムを入力して結果を確認するだけではない雰囲気、過程を楽しむ余裕を提案しているかのようだ。

プログラムのタイトルから、それが何をするものなのか、その実行結果を想像するのは難しい。ただ楕円軌道やsin波を描くだけでも、当時の私のように、プログラムをほとんど理解していない読者には、実行してみるまで分からないような楽しみがあった。また、あるものは実用レベルに至るものではないにせよ、技術デモのような何かすごいことをしているかのような雰囲気を感じさせるものだった。
例えば「ローマの休日」はローマ字入力変換プログラム、「安易言語」はスプレッドシートだ。

HTML + JavaScriptがdynamic HTMLと呼ばれていた時代、「ヤシの実スカッシュ」を思い出してJavaScriptで書いてみたこともあった。

https://espio999.github.io/squash/
github.com

プログラム以外の文章を読む楽しみもあった。当時の商業文化の一面が反映されたコラムは軽薄ではあるものの、意外と本質的なところを突いているかもしれない。現在に通じるものがある。

テクに凝らない、言語をほとんど知らない、無駄なループも平気で作る。

余談

台風到来の夜、思い出に浸りながらネットをさまよっていたら、「プログラムD.J.」のプログラムを全て打ち込んだという投稿を見つけた。正誤表があり、その修正まで反映されている。

parupu.hatenablog.com

そしてYouTubeには「天体観測の夜」と「おもちゃのコンピュータのための21の音」の実行結果がアップロードされていた。

youtu.be
youtu.be

*1:msx40th.org

*2:ascii.jpgame.watch.impress.co.jp

*3:

twitter.com