所得税のために確定申告する人は多いと思うが、住民税はどうだろうか?何もしなければ所得税と同じ課税方式が住民税に適用されるのだが、2017年度(2018年2、3月の確定申告分)から、所得税と住民税に異なる課税方式を適用できることになった。特に株式投資による売買益(株式譲渡所得)や配当がある場合、課税方式を選択することによって、納税者は有利な税負担を選ぶことができる。
www.nta.go.jp
端的には、申告不要制度を活用することによって住民税が安くなる場合がある。ネットを検索すると、その説明やモデル・ケースを活用した適用例を説明しているサイトが見つかるのだが、簡潔明瞭、分かりやすく説明しているところがない。特に税理士のwebサイトなど、読者に理解させるつもりで書いているのか疑わしいところもある。状況は納税者それぞれであり、広範で網羅的な説明が難しいのは理解できる。例えば、申告不要制度を活用することによって、住民税は高くなるものの、それ以上に国民健康保険が安くなる場合だってあるのだ。
とはいえ、特定の状況に限定したとしても「分かりやすい」説明、あるいは順序立てた論理展開は可能なはずだ。私には、できるのにそうしない、そうする気がないように感じた。
この点について不満に思うと同時に、それならば私がブログにまとめようか、そんなことを思いながらブログを認めていたのだが、大和総研が論旨明快な資料を公開していた。私がまとめる必要などない。むしろ、この資料を紹介すべきだろうと思った。
大和総研の資料
話題の資料は次のリンクからダウンロードできるPDF文書だ。
www.dir.co.jp
まず文中の図表4-5を参照した上で、文書を読み進めると良い。理解の早い人ならば図表を見ただけで十分かもしれないが、一通りの文書は読んでみたほうが良い。
所得の多寡は住民税だけでなく国民健康保険の賦課基準額にも影響する。例えば、申告不要制度によって住民税は高くなるものの、それ以上に国民健康保険が安くなる場合についても、この資料は触れている。3章では必要な申告についても触れている。
住民税の試算
国税庁のwebサイト、確定申告書等作成コーナーの様に、住民税の金額を試算できるサイトはないものだろうか?自治体によっては住民税の申告書作成サイトを用意しており、その中で試算できるところがある。一例としてのリンクは末尾にまとめている。
一度、自治体のwebサイトを確認してみると良い。もし同様の機能が提供されいない場合、全国地方税務協議会のサイトを利用すると良いだろう。
試算に際し、申告不要制度の適用有無を選択する項目は提供「されていない」はずだ。有無に応じて、次のように入力する。
申告不要制度を適用する場合 | 株式譲渡所得や配当など、適用する所得を記入しない。 |
申告不要制度を適用しない場合 | 株式譲渡所得や配当など、適用する項目を記入する。 |
申告「不要」なので、適用される所得項目は記入「しない」ということだ。
申告不要制度を適用する場合の住民税が、しない場合よりも高額になる場合がある。申告不要制度を適用することにより、該当所得の控除が適用されないための結果だ。
住民税の高い、安いに関わらず、国民健康保険の加入者であるならば、健康保険も試算してみる必要がある。
国民健康保険の試算
住民税の申告同様、国民健康保険の試算サイトを提供している自治体がある。あるいはwebサイトではなくダウンロードしたExcelで計算させる自治体、計算方法だけを紹介している自治体もある。リンクは末尾を参照してほしい。
住民税同様、申告不要制度の適用有無を選択する項目は提供「されていない」はずだ。住民税試算で判明した所得を入力しさえすればよい。
ケース・スタディ
説明を分かりやすくするため極端なケースになるのだが、次の条件で試算してみる。
- 横浜市在住の無職、個人投資家。昭和30~52年生
- 申告年度の国民健康保険30万円、国民年金40万円。
- 源泉徴収のない簡易口座で株式取引をしている。
- 配当は自動的に源泉徴収される。
- 申告年度の所得は株式譲渡所得100万円、配当所得100万円。
横浜市の試算サイトで、次の値を入力する。横浜市の試算サイトへのリンクは末尾を参照してほしい。
配当 | 1000000 |
社会保険料控除 | 700000 |
配当割控除額 | 50000 |
株式等の譲渡 上場株式等 | 1000000 |
- 株式等の譲渡
収入金額 | 10000000 |
必要経費 | 9000000 |
申告不要制度を適用しない場合
株式譲渡所得と配当に課税される住民税が試算される。
新税率での住民税は0円、合計所得は200万円だ。この場合の年間保険料額は24万3800円と試算される。