Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

FINAL FANTASY II(ファイナルファンタジー 2)


2020年4月25日の今、『ファイナルファンタジー』と言えば『FINAL FANTASY VII REMAKE』になるのだろうか。
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旧「FINAL FANTASY VII」は90年代のマルチメディア・ブームの最中、CD-ROM複数枚構成の超大作としてリリースされた。構図とパースを共有する背景と前景をレイヤー構成にし、3Dポリゴン化されたキャラクタをパースに合わせて拡大、縮小描画することで、それまでのドット絵から立体的な世界観を提示した。
キャラクタ造形と、特に主人公の内面描写、主要キャラクタのシナリオ上の脱落など、印象的な仕掛けもあり、FFシリーズ中、熱烈に支持されている作品だ。現在のFFに継承されている、シナリオ+ヴィジュアル重視の嚆矢となった作品と言えるかもしれない。

しかしグラフィックやシナリオが凝っていても、ゲームそのものの仕組みに新鮮味はなかった。シリーズ中、私にとって最も印象的な作品は「FINAL FANTASY II」(以下FF2)だ。シリーズ2作目にして、最も野心的な「仕組み」が実装された作品だったと思う。
それはレベルと経験値の排除、各種パラメータ、装備、魔法毎の成長と熟練度を個別に成長させる自由度にある。これがプレイヤーの「遊び」とその自由度を大きく拡大する仕掛けに通じている。

FF2の仕掛け

選択したコマンドによって成長するパラメータが決まる。「たたかう」なら「ちから」が、「まほう」なら「ちせい」や「せいしん」が上昇する。使用した武器や魔法の熟練度が上昇する。
ダメージを受けHPが、魔法を使用してMPが減少すれば、それらの最大値が上昇する。
戦士や魔法使いのような、パラメータ構成のテンプレートとなるような枠組みはない。また魔法を習得させるにしても、取捨選択とその成長度合いをコントロールできる。何をどのように成長させるにしても、全てユーザーに委ねられている。

FF2がリリースされた1988年、ネットのような情報共有手段が存在しない当時、少年少女にこの仕組みは斬新すぎた。斬新すぎて、彼らは作り手が全く想定していない対応をしてしまった。パーティ・アタックだ。意図的に同士討ちさせてHPを無理やり上昇させる。他のゲームで言うレベル上げの感覚で、これを常用することにより、FF2は開発者が想定していないゲーム・バランスで遊ばれることになってしまった。その経験、そこから派生した印象が現在まで継承され、FF2につきまとうことになる。

実際のところFF2は、開発者視点では素直な仕組みが導入されており、それほどマニアックではない。シナリオを追っていけば、戦闘を通じて必要な成長が促される。例えば、このような具合だ。

  1. 敵にターゲット指定される
    1. 「すばやさ」が上昇する。
    2. 敵攻撃の回避率向上
  2. 敵に攻撃され、ダメージを受ける。
    1. 「たいりょく」が上昇する。
    2. HPの上昇率向上

パーティ・アタックではHPは上昇するものの、「すばやさ」が成長しないのだ。ゲーム終盤になるほど敵の攻撃は苛烈になり、それは結果としてゲームの難易度上昇に繋がる。被ダメージの大きな攻撃を避けられず、受け止め続けることになるからだ。HPダメージだけならば良いのだが、一撃に対して付加される複数の状態異常効果が厄介なのだ。

残念ながら、当時の少年、少女がこの意図を察することはなく、メディアを通じて十分に伝えられることもなかった。その状況に対する、彼らなりの回答がパーティ・アタックだったのだ。

そして、この誤った印象は現在の端末への移植においても、過ぎた影響を与えているようだ。

移植版のアレンジ

当時の誤った解釈、印象により曲解された作品は、現在の端末への移植に際し、難易度調整が検討されたのだろうか。次のアレンジが加えられた。

  1. やり込み要素「秘紋の迷宮」の追加
  2. クリア後シナリオ「Soul of Re-Birth」の追加
  3. 魔法妨害率の排除

秘紋の迷宮は、いわゆる「やりこみ」のための要素だ。この迷宮はゲーム序盤から解放されている。迷宮の各ステージは、ちょっとしたミッションだ。キャラ成長作業は単純作業的なものになりがちだが、この迷宮を遊ぶことで退屈を紛らわせることができる。加えて、より強力な敵に挑戦し、より強力なドロップ・アイテムを狙う機会にもなっている。

またSoul of Re-Birthへのプレイ支援に通じる仕掛けにもなっている。Soul of Re-Birthでは、本編途中で降板したキャラクタだけでパーティが編成される。本編クリア後よりも強力な敵が登場するマップでありながら、それらの初期パラメータと装備はシナリオ中の降板時点のものだ。秘紋の迷宮攻略を通じて入手できる各キャラクタの専用装備は、そのギャップを埋め合わせてくれる。
キャラ成長だけでなく、クリア後シナリオに持ち越す装備品もモチベーションになるだろう。

魔法妨害率は今回のプレイで初めて知った要素だ。各種装備品には魔法の成功率、効力に影響を与える隠しパラメータが存在したのだという。基本的にマイナス要因のパラメータで、いわゆる重装備であるほどマイナスは大きく、軽量であるほどマイナスは少なくなる。
法主体のキャラクタがいるならば、そのキャラクタに鎧や剣、弓を装備させるべきではなかったのだ。この要素が排除された。

さて、当時の誤った解釈に基づいたプレイ経験のある古参プレイヤに対して、このアレンジはどのように作用するだろうか。1週間、25時間ほど遊んだシナリオ中盤にして、このような調子だ。

とにかく大甘である。秘紋の迷宮にて、あえて強敵に挑むスタイルにより「よいちのゆみ」まで取得してしまった。
ちなみにレイラは左利きである。弓は「ひだりて」に装備させるのが筋なのだが、そんなことはどうでもよくなるくらい「よいちのゆみ」は強い。

FF2は当時の少年少女に、歪んだプレイ・スタイルをもたらした。移植作のアレンジを通じた、開発者からの歩み寄りも踏みにじられてしまう。
当時の少年少女、そして開発者とのすれ違いは、21世紀になってまだ解消されないのだ。

Soul of Re-Birth

ラスボスである皇帝は本編中、地獄の力を手に入れて復活する。ここに新しい設定が盛り込まれた。復活した皇帝は善の皇帝と、悪の皇帝に分離したことになっている。本編で倒したのは悪の皇帝、クリア後のシナリオであるSoul of Re-Birthでは、善の皇帝を打倒することになる。
パーティは本編を途中で離脱したミンウをはじめとするキャラクタで構成される。装備とパラメータのみ、クリア時のものが継承される。この仕様により、アスピルなど、一部の魔法が使えない場合もある。特にラスト・ダンジョンの敵は本編よりも強力である。そのため本編よりも難易度が、若干高まっている。
一方、強力な敵はドロップ・アイテムも強力であり、加えて新たに用意されたキャラクタ専用装備が、救済措置として機能する。特にスコットの専用装備であるワイルドローズは、アイテムとして利用するとバーサク、レベル16を発動し、与えるダメージがインフレ的に増加する。この入手が、事実上の目的のようなものだ。この力を利用すれば、ラスボスまで簡単に到達、打倒することができる。

余談

主人公グループの中心キャラクタでありながら、シナリオ中盤で死んでしまい、ゲーム中、二度とパーティ復帰しないキャラクタとしてFF7のエアリスが有名だ。実際のところ、このような演出が始まったのもFF2が最初だ。パーティ離脱は死亡だけとは限らない。
・ミンウ
・ヨーゼフ
・ゴードン
・レイラ
・リチャード
とにかくFF2はこのような離別の繰り返しだった。

Soul of Re-Birthで離別メンバーだけでパーティを構成する仕掛けは、一見ファン・サービス的ではある。一方、「どうせ途中で降板する」と、キャラ成長を疎かにする古参プレイヤーに対する仕掛けとしては意地悪に思われる。すれ違いは、ここにもある。

そしてFF3へ

impsbl.hatenablog.jp