Surface Proは、Surface Connectと呼ばれる独自端子を備えており、このポートを通じて充電を行う。充電は専用アダプタで行うのが普通なのだが、サードパーティ製のアダプタも存在する。さらに最近は、USB PD (Power Delivery)*1対応充電器に接続するための、USB Type-C to Surface Connectケーブル(以下、充電ケーブルと呼ぶ)も販売されている。
もちろん、専用アダプタ以外の使用はMicrosoftのサポート外であり、場合によってはPSEマーク*2の表示が無かったり、Surface Proの電気的な仕様、規格と整合しないため、事故に遭遇するだけでなく、そのような事故に対して損害保険を適用できないリスクも存在している。
重要: サードパーティの互換性
サード パーティー製アクセサリーには、デバイスと互換性がないものや偽造品が存在する可能性があります。マイクロソフト純正またはマイクロソフトのライセンスを受けたデバイスやアクセサリのみを購入し、使うことを強くお勧めします。 互換性がないか偽造されたアクセサリ、バッテリー、充電デバイスを使うと、デバイスが破損し、重大な傷害やその他の深刻な危険につながりかねない火災、爆発、バッテリー障害が発生するリスクがあります。 マイクロソフトが製造、ライセンス、または提供していない製品の利用による損害については、ハードウェア保証の対象となりません。
サポート対象外のリスクはともかくとして、電気的な仕様が整合しさえすれば使用できるのか?と言えば、それが怪しいのだ。もちろん、バッテリや電気系統に損害する可能性は気にしない、ただ通電し、Surfaceが使えさえすればよいのだ、と言うユーザーは気にしないだろうが、それ以外のユーザーにとっては意識しておいた方が良い事柄がある。
Surface Proの電源仕様
充電ケーブルのの商品説明でよく見かけるのが、使用する充電器についての要求だ。端的には、次の事柄を前提にしている。
- USB PDに対応していること
- 45W (15V, 3A)に対応していること
しかし、Surface Proの電源仕様はモデルごとに異なっており、そのいずれも、この要求とは整合しない。
24W (15V, 1.6A) | Surface Pro 4 (Core M) Surface Pro 5 (M3) |
31W (12V, 2.58A) | Surface Pro 3, 4 |
39W (15V, 2.58A) | Surface Pro 5, 6 |
60W (15V, 4A) | Surface Pro 7, 7+, 8, X |
どれもSurface Proそのものの仕様であり、専用アダプタの仕様ではないことに注意すること。専用アダプタには、独立したUSB端子が搭載されており、Surface Proとは異なる機器に対する給電にも利用できる。Surface Proへの給電と、このUSB端子への給電の合算が、専用アダプタの仕様となっている。
いずれの仕様も、USB PDのパワールールである45V (15V, 3A)とは整合しない。
USB PDは、60Wまでは3.0Aを前提としているが、Surface Proは3.0Aを前提とはしていない。USB PD対応充電器と、充電ケーブルでSurface Proを充電した場合、前述の電気使用に照らし合わせれば、
- Surface Pro 6以前
39W必要なところに、45W供給されることになる。過給電により、充電時間が若干高速になるかもしれない。しかし、それはバッテリを含む電気系統に仕様以上の負荷を与えており、製品寿命を縮めるかもしれない。
- Surface Pro 7以降
60W必要なところに、45W供給されることになる。端的にパワー不足であり、充電時間が若干遅くなるかもしれない。あるいは給電が消費電力に追いつかず、電源に接続していながら、"Not charging"の状態が続くことになるかもしれない。
このような状態でも、バッテリを含む電気系統には負荷を与えることになり、やはり製品寿命を消耗させることになる。
実際にやってみる
ここで紹介するのは、45W (15V, 3A)出力可能な充電器と、充電ケーブルをSurface Pro 4に接続した場合の事例だ。
Surface Pro 4の電源仕様は、31W (12V, 2.58A)だ。充電ケーブルは3.0Aに対応している前提なので、通電に差し支えることはない。Surfaceが約50%の充電状態で、約1時間、通電させた。この時の状態を、コマンド”powercfg”*3でレポート出力したのが、次の画像だ。
この記録から、次のことを読み取ることができる。
- 約1時間で、17565 - 30180 = 13245mAh(49Wh)給電された。
- Surface Pro 4の仕様に合わせ、定格12Vとすれば、平均4.08Aの電流が流れたことになる。
- USB PDの仕様に合わせ、定格15Vとすれば、平均3.27Aの電流が流れたことになる。
電流は増減があり、常に一定ではないのだが、平均値として見てもSurface Pro 4の定格2.58Aを上回る電流が流れ続けたのが分かる。ケーブルの定格3Aも上回っており、この時のケーブルは、微かに温まっているのだ。もちろん、バッテリにも通常以上の電気的な負荷が生じていたはずだ。
これを危険な状態と見なすか、誤差の範囲と認識するかは、ユーザー次第だ。
余談
Surface Proに限らず、専用アダプタというものは、とかく融通が利かないものだ。その点、USB PD充電器は、USB Type-Cケーブルを着脱使用可能で汎用的に利用可能で、そのアダプタ一つあれば済むのが、ユーザーにはありがたい。
特にAmazon.co.jpには、多くの業者が同様の商品を出品している。それらの中にはSurfaceをはじめとする機器であったり、USB PDのような業界団体規格との互換性、対応を主張している。しかし商品説明をよく読むと矛盾があり、情報と商品仕様が整合しないことがある。
さらに購入者のレビューが掲載されているのだが、その内容はカジュアルかつ「いい加減」であることが多い。
- 〇〇(使用した機種)で利用できた
- 充電が速くなった
おそらくユーザーのほとんどが、電気が通じさえすればよい、程度に捉え、危険性については考慮していない、気にしていない、想像していない、あるいは端的に「知らない」のだろう。
使用機器がUSB PDに対応しているのであれば、それで十分ではあるのだが、Surface Proのような独自仕様のものであれば、その使用に置いてユーザーは責任とリスクを自覚すべきだろう。