スマートフォンからノートPCの充電まで、USB Type-Cケーブルを利用するのが一般的になった。ケーブルだけでなく、充電器までもがダイソーでも入手できるようになり、もはや日用品の域に達している印象だ。
Amazon.co.jpにあふれる中華製品、その商品説明を読んでいると、そこには明らかに規格、仕様との不整合が記載されている。また、その商品に対するレビューもいい加減なものばかりだ。
- 60Wで通電した→何を根拠に?
- 何だかいつもより充電が速い→気分の問題?
- 〇〇(モデル名など)で使えています→真に規格通りに?
日用品なのだから細かい仕様など気にしない。急速充電など、感覚として「なんだか速そう」と納得できれば十分、通電してさえいれば、細かい事など気にしない。そのようなユーザーであれば、それでも良いだろう。私は違う。
USB PD (Power Delivery)について、特にアダプタ、ケーブル購入に必要な観点から調べ、まとめた。
公式情報
USB PDに限らず、USBに関する公式情報、規格、仕様などは、USB-IF (Implementer's Forum)からダウンロードできる。文章は数も内容も膨大で、目的とする規格の文書を見つけ、必要な項目に限定して目を通すだけでも労力を要する。
前置き
勘違いを避けるため、まず触れておかなければならないことがある。USB PDは給電に関する独立した規格、仕様であり、USB 3.* Gen *といった世代や、Standard-A、Type-Cと言った端子形状とは関係がない。
USB 3.0だから、あるいはUSB Type-Cケーブルだからと言って、暗黙にUSB PDが機能するものではないのだ。
そもそも両端がType-C端子のケーブルだからと言って、USB 3.0であることが保証されているわけではなく、それはUSB 2.0ケーブルである可能性もある。
それぞれは個別要素であり、USB PDもその一つなのだ。だからUSB 2.0、USB PDをサポートするUSB Type-Cケーブルと言う商品も存在する。
まずUSB PDは置いて、USBとしての最大電流は次のように定められている。
USB | 最大電流 |
---|---|
1.0 | 0.1A |
1.1 | 0.1A |
2.0 | 0.5A |
3.0 3.1 Gen 1 |
0.9A |
3.1 Gen 2 | 0.9A |
3.2 Gen 2 x 2 | 0.9A |
ならばモバイル・バッテリなどから1.5Aで充電しているのはなぜなのか?それはUSB BC (Battery Charging)という別の規格、仕様だ。
SDP Standard Downstream Port |
0.1A (low) 0.5A (high) 0.0025A (suspend) |
CDP Charging Downstream Port |
1.5A |
DCP Dedicated Charging Port |
1.5A |
USB PDに対応していない場合、この仕様で通電している。これ以上の電力供給に対応するのが、USB PDだ。
Quick Charge (QC)
USB PDはUSB-IFという業界団体の定めた規格、仕様であるのに対して、QCはQualcomm社の技術だ。両者は独立した非互換規格、仕様だったが、QC 4.0以降は互換性がある。
QCに正式に対応している製品は、同社サイトで確認することができる。
USB PD
USB PDをサポートするアダプタは、電力に応じた電圧、電流値を明示する必要がある。これは通常、アダプタの側面などに印字されている。次の写真は、その一例だ。
この組み合わせはパワールールと呼ばれ、仕様によって次のように定義されている。
これを私なりにまとめると、次のようになる。
電圧 | 5, 9, 15, 20 |
電流 | 3, 5 |
電力 | 15, 27, 45, 60, 75, 100 |
60Wまでは3Aで動作する。それ以降は5Aで動作する。言い換えると、60Wまでは3A対応のケーブルが必要で、それ以降は5A対応のケーブルが必要となる。前置きで触れたケーブルの話題は、ここに関係している。
ちなみにQCにも、同様の制約がある。
3A、5A対応を明記しているケーブルを探すのは難儀だ。コツは確かなブランドであることを前提に、60W、100W対応を明記しているケーブルを探すことだ。前者であれば3A、後者であれば5A対応だ。例えば、このようなものがある。
対策:結局は信頼できるメーカーの製品を購入するのが…
USB PDを機能させるために必要な情報は分かった。それを実際の買い物に、どのように活かすべきだろうか。QCに関して言えば、前述のQualcommサイトを参照し、公式に対応している製品を探すことができる。しかしUSB PDでは、それはできない。
結論は、AnkerやCheeroのような、信頼できるメーカーの製品を買う、と言うことになる。
氾濫している中華系アイテムの商品説明を、これまでの知識を活かして、規格、仕様との整合を精査することはできるだろう。不整合が見つかれば購入候補から外すことになるのだが、整合していたとして試す価値があるかが問題だ。もちろんユーザー・レビューはあてにならないので、結局は自分で試すことになる。
リーズナブルな価格に見合うリターンが期待できるギャンブルと合理的に判断できる場合もあるだろう。しかし、そのような観点でインチキを仕掛けているかもしれない製品が、より重要な所でもインチキしているかもしれないリスクを見落としてはいないだろうか。例えば、PSEだ。
特にアダプタ、バッテリは出火リスクを伴う。情報の整合性を確認するのは重要なことなのだが、商品説明や価格では捉え切れないリスクも忘れないようにしたい。
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