これは2006年に投稿したエントリーで、以前のブログから引き継いだものに加筆したものです。
先生のための先生が書いた本。学習について、その仕組み、どのようにすれば学習内容が印象に残るのか?そのためにはどのような工夫をしなければならないのかを、事例や検証を交えて解説した本です。
本書の骨子は、従来の学習方法についての批判とその検証、そしてその検証を元に、意義、意味のある学習とはどういうものか、ということ。従来の学習方法について取り上げられるのが次の4項目。
- 詰め込み教育
- 経験は学習を促すのか?
- 単なる繰り返しの学習
- 学習量と学習結果
特に1と4について、次のことを明らかにします。
- 詰め込み教育は、実は詰め込めていなかった。
- 教科書は厚い方が良い。
従来の学習方法に対する批判、なぜそれがダメなのか?についての検証と同時に、どのような学習方法が有意義であるのか?が述べられています。この後者が社会人にとって有意義な箇所です。具体的には、
無意味材料の有意味化 | 意味のない物事でも、意味付けすることで記憶に残りやすい。 |
学習対象に対する認識 | 学習対象と学習者の認知構造が合致するときに学習しやすい。 |
知識の構造化 | 知識を構造化することによって、ある部分の理解が進めば、その他の領域の理解も促進される。 |
それぞれの要素について検証を進めながら、最終章で、それらの検証結果をまとめて教育への提言を行っています。非常に論理的に進められる章立ては、このように構成されています。
第1章:有意味な学習と認知構造
- 学習論に、まちがいはないか?
- 学習対象の量は少ないほどやさしいか?
- 経験すれば学習できるか?
第2章:有意味学習の特徴
- 詰め込むとあふれるか?
- 見れば、見えるか?
- 学習すればどんどん伸びるか?
- 賞罰は学習を進めるか?
- 学習すれば知らないことが減るか?
第3章:理解と応用
- 理解の構造
- 有意味化と理解と確信
- 理解と応用
- 構造化された知識
第4章:知識と教育
- 知識のありようとできること
- 内容と方法と教材解釈
- 教師の役割
第5章:教育への提言
- 「詰め込み教育」の問題点は、[詰め込めない]こと
- 月の半分は昼間に見える
- 教科書は厚いほうがいいという正論
社会人になると、自己啓発であったり必要に迫られたり、理由はともかく学習する機会というのは日常にあふれていることと思います。しかしながら非常に時間の限られた日常でもあります。学習は効率的、効果的に進めたいところです。まず学習という行為を捉え直すことで、無駄を無くし、学習効果を高める必要があります。
本書は自身の学習方法を見つめ、それを是正するための良いガイドブックになることと思います。