Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

ガンダムタクティクス MOBILITY FLEET0079

ガンダムのゲームと言えば典型的なフォーマットがあり、端的には、

の2つに集約される。この手の作品は様々な端末向けにリリースされると同時に、シリーズ展開もされる。その他の作品は、あまり一般的なジャンルではない、商業的成功に繋がりにくいマイナー作品だ。取り組みが冒険的、例外的な作品で、ゲーム上の仕組みや仕掛けがマニア向けであったり、一発屋的なものや、端的にクソゲーに類するものまである。

ガンダムタクティクス MOBILITY FLEET0079』も、そのようなマイナー作品の一つだ。90年代のマルチメディア・ブームの最中、PIPIN@というバンダイAppleが共同開発したゲーム機用にリリースされ、後にWindowsへ移植された。プレイヤーは割り当てられた戦艦、その搭載MSを指揮し、任務をクリアしていくリアルタイム・シミュレーションだ。
かなりガンダム通に響く仕組み、仕掛けが実装されているのだが、かなりマニアック過ぎる仕様であり、とても一般受けするものではない。リリースされた端末の想定ユーザーがガンダム・ファンと被るわけもなく、被ったとしても彼らがマニアである可能性は低いだろう。その上、ゲーム自体が野心的ではありながら、地味で高難易度な作品ということもあり、あらゆる点においてミスマッチを重ねていた異色の作品だ。

この投稿では、この作品の特色を紹介すると同時に、高難易度を打破すべく設定ファイルの編集方法も紹介する。
参照先のハイパーリンクは、投稿末尾にまとめて掲載している。

特色

有視界戦闘と艦砲射撃

ガンダム世界ではミノフスキー粒子の影響により、レーダーが有効に機能しないことになっている。そのためモビルスーツによる有視界戦闘が発展した。ゲームはこの世界観を端的に再現している。
各ステージの流れは大まかに次のようになる。

  1. 熱源探知、MSによる有視界索敵で敵戦艦を発見する。
  2. MS、戦艦による攻撃で、敵戦艦を破壊する。
  3. 敵全滅まで繰り返す。

しかしMSの攻撃は戦艦に対して、決定的に強力というわけではない。戦艦には耐久力と防御力というパラメータがある。耐久力は言うなれば回復できないHP、防御力は自動回復するHPで、戦艦を破壊するには耐久力を0にしなければならない。
どうやらビーム兵器による攻撃では、耐久力の前に防御力へのダメージがカウントされる。そして、次の攻撃までに防御力が徐々に回復していく。実体弾と接近戦による攻撃では耐久力に直接ダメージを与えられるのだが、対空防御によりMSはダメージ・リスクを負わねばならない。いずれにせよMSの攻撃では戦艦にとどめを刺すのが難しいのだ。
そこで戦艦の艦砲射撃による大ダメージへの依存が生じる。よく考えられた仕組みだが、マニアックだ。

とにかく史実通り、厳密、そしてトレードオフ

ゲームは0079年9月から始まる。丁度、アムロ・レイがはじめてガンダムに搭乗したころだ。そのためゲーム序盤の登場兵器は限られている。どれだけ高スコアを記録したところで史実で新兵器が登場する時期まで、高性能MSは配備されない。従って高性能MSが登場するのはシナリオ中盤以降だ。その活躍機会は少なく、期間も短い。

そして高性能MSが配備されたとしても、搭乗するパイロットが問題となる。高性能MSの性能は、パイロットの特性に左右される。MSのスペック上の性能がどれだけ高くとも、それは最大値であり、大抵のパイロットではスペック通りの性能が出せないのだ。
ゲーム中の最強兵器の一つ、RX-78opt(Gダッシュ)での具体例だ。初心者パイロット、ベテラン・パイロット搭乗時のステータス(移動速、命中率など)に注目してほしい。明確な性能差が確認できると同時に、ベテランでさえ移動速を100%発揮できていない。まだ埋められない余力が明示されている。

初期配属パイロット以外は、スコアに依存せずランダムに配属が決まるのだが、定員が決まっているため、空席が無ければ配属されない。つまりエース・パイロットの配属を期待するならば、何処か必要な段階で、成長させたパイロットを戦死させる必要があるということだ。これはポイントを下げることに繋がり、MS配備に影響する。加えて、空席があるから確実にエースが配属されるわけでもない。よく考えられた仕組みだが、やはりマニアックだ。

Windows 10での動作

この投稿ではDigiCube Software Seriesからリリースされたものを使用している。
この作品はWindows 95、98、ME向けに移植されたものだが、Windows 10にもインストールできるし、動作もする。しかし、いくつかの制約を伴う。

まず実行ファイル(gundam.exe)のプロパティを変更しなければならない。”互換モード”の設定は任意だが、次の設定は必須だ。

カラーモードを制限する:on
16ビット(65536)カラー

ゲーム・メディアはCD-ROMだ。インストール時に用いるのだが、メディアをISOファイル化してインストールすることもできる。インストール後、メディアは不要だ。ゲーム実行時にメディアのドライブ挿入を求められることはない。

ゲーム中、随所で動画が再生される。オープニングやシナリオ中のムービーは再生されるのだが、戦闘中に挿入されるムービーは音声だけが再生され、映像が表示されない。
これは32bit時代のQuickTimeがサポート終了しただけでなく、適切なコーデックがWindows 10に搭載されていないためと考えられる。実際、ソフトウェアに収録されているmovファイルを直接再生しようとすると、Windows Media Playerが起動するものの、音声だけが再生され、動画は出力されない。
QuickTime for Windows 7.7.9をインストールしてみた。QuickTime Playerでは、movファイルが期待通りに再生されるのだが、やはりゲーム中では音声だけが再生され、問題解決には至らなかった。
ゲームを遊ぶ上での支障はないものの、艦砲射撃やビグロマイヤー、Gダッシュの攻撃、回避、被弾などの戦闘シーンは、音声だけが再生される。少々、残念なところだ。

設定ファイルの編集

このゲームにはシナリオ分岐が存在し、複数のルートをたどることができる。とはいえ、クリアしても一からやり直しとなり、いわゆる「強くてnewゲーム」はできない。そのため、やり込み的な要素もない。
前述の特性もあり、いっそのこと好みの兵器、好みのパイロットを揃えて「タクティクス」に集中して遊んでみてはどうかと思う。

このゲームには2種類の設定ファイルが存在する。初期設定ファイルとセーブ・ファイルだ。初期設定ファイルは次のパスに保存されている2つのファイルだ。

C:\Program Files\BANDAI\GundamTactics\Bina

PSTAT0.INI 連邦軍
PSTAT1.INI ジオン軍

ここにはゲーム開始時の戦艦、MSの情報が保存されている。パイロット情報は保存されていないし、パイロット情報を加えても無視される。ゲーム開始時から必要な艦船、MSを設定するには、まずこのファイルを編集する必要がある。

初期設定ファイルの情報は、あくまでもセーブ前、ゲーム開始直後の状態にだけ反映される。ゲーム・スタート以後、新たに戦艦、MS、パイロットに手を加えるならば、セーブ・ファイルを編集する必要がある。セーブ・ファイルは次のパスに保存されている5つのファイルだ。

C:\G-TACT

SFD1~5が、それぞれのセーブ・スロットに対応している。1番目のセーブ・スロットはSFD1という具合だ。

これらのファイルを編集する際にはバイナリ・エディタを用いる。私の場合はHEX EditorというMicrosoft製のVSCode拡張を用いている。

どのファイルでも編集領域は共通だ。それは次のフォーマットとなっている。

0C 戦艦、1隻
0D~14 MS、8機
15~24 パイロット、16名

各スロットに該当データのバイナリを記述する。バイナリは後述する情報を参照してほしい。次の例は連邦軍の初期状態として、次の状態を設定したものだ。

戦艦 ペガサス
MS Gダッシュ x 2
ジム・コマンド x 2
ジム x 2
コアブースター x 2

MS、戦艦、パイロットのバイナリを、次のファイルへ一覧としてまとめている。GitHubからダウンロードして参照できる。
github.com

連邦軍ジオン軍を混在させても問題ない。プレイヤーが連邦軍だとしても、ジオンの戦艦、MS、パイロットを用いて遊ぶこともできる。ホワイトベースに連邦、ジオンのMSを混載し、パイロットも両軍から採用してみた。

余談

このゲームのような90年代のレトロ・ゲームはCD-ROMをメディアとしていたものが多い。そのため、中古で入手する際に、どうしてもメディアの状態には神経質になってしまう。メディアの状態、特に傷物の場合には、データが正常に読みだせないことがあるからだ。
このゲームも、やはり傷物で、その復旧には苦労させられた。その顛末を次の投稿にまとめている。
impsbl.hatenablog.jp