Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

BALANCE of POWER

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これは2005年に投稿したエントリーで、以前のブログから引き継いだものです。

ほとんどのゲームは娯楽に徹しているため、ほとんどの場合においてプレイヤーの圧倒的勝利で終わる。しかしスポーツにせよビジネス交渉にせよ、「圧倒的」な勝利と言うのは、現実においては極めてまれな事例ではないだろうか。
一方的に有利な展開によって決着するのではなく、どこかで見出され妥協点へ収束していくように展開する、妥協前提の勝利、あるいは体の悪い「win-win」モデルが現実ではないだろうか。
異なる表現をすれば、相手を追い込み過ぎてはいけない、そうならないように配慮しながら、僅差の勝利を追及した帰結とも言えるだろう。

『BALANCE OF POWER』(以下、BOP)は、そのような現実を反映したかのようなゲームだ。


BOPは80年代後半の、いわゆる洋ゲーだ。日本では、PC/ATMacintosh、PC98、そしてなぜかMSX2向けにリリースされた。この投稿執筆時点では、Internet Archiveから、いくつかのバージョンをダウンロードすることができる。次のハイパーリンクは、BOP, 1985 EditionのDOS版だ。
archive.org

プレイヤーが担当するのは旧ソ連共産党書記長、あるいはアメリカ合衆国大統領だ。ゲーム内の8年間で、担当陣営を拡大しなければならない。他国が自陣営に靡くことによって、世界的な威信を獲得できる。ゲーム中では、この威信がポイントとなり、その多寡が勝敗を決する。

自陣営へ靡かせるための手段は外交だ。

  • 条約締結
  • 経済援助
  • 軍事派遣

成功するごとに、自陣営との距離が密接になっていく。密な関係になるほど、各国に割り振られたポイントが、自国の威信へ加算されていく。
このポイントは、地政学的な優位性によって割り振られている。例えば、同盟国にように自陣営にとって大切な国、あるいは中近東のように地政学的な優位性を持つ国ほど、高得点が割り振られている。そのような国が敵陣営と親密になれば、同盟国に信頼を失うことになり、自陣営のダメージ=威信の減少に繋がる。つまり、自陣営を強化することは、敵陣営を切り崩すことでもある。そして、ここがまさにこのゲームの争点なのだ。

プレイヤーの外交手段は、敵陣営からすると懸案事項となる。それは敵陣営との外交交渉に通じている。この交渉が、一般的なゲームで言うところのバトルだ。
懸案対象国が敵陣営にとって重要であるほど、あるいは敵陣営が追い詰められている情勢であるほど、敵陣営は強硬になる。どちらかが譲歩するまで交渉は続くのだが、交渉が決裂するたびにデフコン(警戒態勢)が上昇する。デフコン1に達すると核戦争が勃発する。つまりゲームオーバーだ。

このゲームの肝は、この交渉にある。ある国が自陣営に近づくほど、自国に対する威信が上昇する。それは同時に、その国が敵陣営に寝返ったときのダメージに繋がる。同盟国ともなれば、敵陣営に寝返ったときのダメージは大きいものの、そう簡単に寝返ることはない。従って、微妙なポジションにいる国ほど、体制を変えやすく、両陣営から狙われることになる。

  1. 自陣営が通商条約を締結→威信上昇
  2. 敵陣営は静観
  3. 敵陣営が軍事顧問を派遣
  4. 静観するか、抗議するか?

軍事顧問派遣は、かなり強めの反応であり、自陣営としては牽制しておきたい。しかし通商条約だけの間柄では、講義する根拠は乏しい。もし抗議し、そこで妥協しようものなら、通商条約約で上昇した威信は失われる。加えて他の同盟国からの信頼も低下する。得てして、このような中途半端なポジションの国との関係性、それが生み出す引くに引けなくなる状況が核戦争の引き金になるのだ。

相手国との関係性だけでなく、ゲーム中の状況も、抗議における敵陣営の強硬さを左右する。逆転できないほどの圧倒的大差で敵陣営を追い詰めているときほど、敵陣営は無茶をしてくるのだ。典型的なのが、中近東への軍事派遣だ。中近東は地政学的に圧倒的な重要な地位を占めていながら、両陣営とも同盟関係が薄い。地政学的には見捨てにくいところだが、抗議する根拠に乏しい領域なのだ。
このようなとき、まず抗議をしても核戦争は目に見えている。威信激減を承知で、その地を手放すしかない。敵陣営を追い込み過ぎてはいけない、と言うことが、意図的にゲームに織り込まれている。つまりこれが”BALANCE OF POWER”=勢力均衡状態、と言うことなのだ。

余談:バランス・オブ・パワー デザイナーズ・ノート

このゲームの作者であるクリス・クロフォードは、自ら解説本を執筆している。これはいわゆる攻略本ではなく、ゲーム内のロジック、バックグラウンドを解説した書籍だ。ゲーム開発に際し、ここはこのように考えた、とか、ここではこのように計算している、と言ったことが説明されている。以下は、目次の引用だ。