Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

BLAME!

BLAME!(10) (アフタヌーンコミックス)
これは2006年に投稿したエントリーで、以前のブログから引き継いだものに加筆、修正したものです。

海外でも評価の高い、弐瓶勉*1のSFコミック。実家の近所にある古本屋でたまたま1、2巻が売っていました。AKIRA攻殻機動隊に近い雰囲気と、バンド・デシネに見られるような、一方的に読者を突き放すようなストーリー展開に惹かれて購入しました。見事に引き込まれて、翌日、新品で全巻揃えてしまいました。

その世界観や状況が、作中では完全に説明されていないので、伏線などが解消されながら、結果としてすべてのつじつまを合わせて終結するストーリーを好む人には向かない漫画です。雰囲気だけでもいける人、特に近未来もの、サイバー・パンクもの、そして巨大なものが好きな人には最適な作品です。
最近は『シドニアの騎士*2で有名ですが、同作品にも通じる巨大建築やSF的要素などの始まりに触れることのできる作品でもあります。


主人公はただただその世界を探索しているか、戦っています。ほとんど話しません。全10巻を通して、その他の主要登場人物はわずかで、彼らもまたほとんど話しません。少し台詞があったかと思えば、次のコマでは戦闘しているか、やられて死んでいます。
そのくせ、世界に深く関わっていそう、もしくは物語の鍵になりそうなキーワードはどんどん現れるわけですが、それらのほとんどは名前だけで説明されません。数少ない台詞や会話、コマから得られる情報から推論できるものもありますが、人それぞれに解釈できるほどの情報しか提供されません。

物語の舞台も、そのストーリ同様全貌を見せない、見ることのできない仕掛けが施されています。延々拡張し続ける都市建築空間と並列に存在している多次元世界。

前者は、都市が延々拡大し続け、そのまま天を超え、そして惑星すら覆ってしまい、ついには天体系をも覆ってしまったほどのスケール感が提示されます。実際、作中では10何万キロの球状空間を内包していることを説明するくだりがあります(10何万キロというと、木星の直径に相当します)。

後者は、読者が眺めている劇中の背後で、並列に活動している別の世界を提示します。主人公たちは探索の間にその異なる世界をシームレスに行き来します。ここからここがAと言う世界で、ここからがBと言った表現が明示されるわけでもなく、読者の世界認識を揺さぶります。

主人公たちはその世界を徒歩で探索していきます。そのため、読者の時間感覚、劇中での時間感覚の極端な相違を生じさせます。ある場面転換では読者にとっては、ほんの1ページをめくる一瞬が、劇中では数ヶ月だったり10年だったり。

物語が提示する世界は読者を突き放すかのような感覚を提示すると同時に、多次元、時間の罠、そして物語り自身が抱える謎により読者を迷宮へ誘います。そして徹底的な破壊を伴う戦闘シーン。麻薬みたいなものでしょうか。

作者が提示する超巨大建築空間は、東京を題材にMEGALOMANIAとしてSTUDIO VOICE*3に連載されていました。こちらで、「あぁ、アレか!」と思い出した人もいるかもしれません。あの、いつも後ろから2-3ページ目に掲載されていた見開きのアレです。もちろん、コチラは劇中の超巨大建築とは全く異なるものですが、世界観には通じるものがありますね。