これは2007年に投稿したエントリーに加筆、修正の上、以前のブログから引き継いだものです。
HELLBOYシリーズのスピン・オフ、『ヘルボーイ:妖蛆召喚』から分岐したストーリーがB.P.R.D.シリーズだ。ヘルボーイ辞職後の超常現象調査防衛局の活躍を描いている。
1巻では、B.P.R.D.メンバ―であるケイトの回想から始まる。スピンオフの発端となるヘルボーイの離職、それがメンバーに与えた影響、新メンバとなるヨハンの過去を説明しながら、新シリーズの話題へとHELLBOYシリーズの支流を形成し始めると同時に、カーベンディッシュ、ロブスター・ジョンソンなど、リンクとなるキャラクタ、設定を交えながら、独自の世界を展開していく。
HELLBOYシリーズは邦訳版が発売されたのだが、B.P.R.D.シリーズは翻訳されていない。その理由はシリーズ作画にありそうな気がしている。Mike Mignolaは、ほとんどのイラストにタッチしていない。
HELLBOYシリーズの人気は、その世界観だけでなく、Mike Mignolaによる特徴ある作画によって支えられている、特に日本では作画の影響は大きい、と考えるならば、多忙によりMike Mignolaが作画を離れることが多くなった時期以降の作品を邦訳出版することについて、商機を見出せないのかもしれない。
実際のところ、一つの例外を除いて、同氏自ら作画を手掛けているエピソードは収録されていない。例外というのは、第6巻に収録されている最終エピソード、最後の数ページだ。ここだけは、ヨハンと、ホムンクルスのロジャーの印象的なエピソードが、同氏の作画によって描かれている。よほど思い入れがあったのかもしれない。少し涙腺が刺激されそうなエピソードだ。
やはり、リリース初期は売り出しに力が入るのか、特に1、2巻の作画には目を引くものがある。特に1巻は、これまでの読者にも受け入れられやすいのではないだろうか。一つのエピソードを除いてMike Mignolaのコピー的な作画だ。特に最初のエピソードは同氏独特のデフォルメを若干緩和し、少しリアル調に寄せた作画が印象的だった。続くエピソードもコピー的に作画されるのだが、着色だけは本人によるものだ。
2巻から、ストーリーもHELLBOY路線から、B.P.R.D.路線へと大きく変化し始める。それを印象付けるかのように、作画も大きく変化していく。最初のエピソードはアニメ版HELLBOYを思わせる作画だ。続くエピソードから、さらにMike Mignola色が抜けていく。同氏のタッチ、印象を取り戻すのは、6巻最後のエピソードだ。
それまでは、このような作画が続くことになる。あのデザインされたかのような強力なデフォルメ、明暗明瞭なコントラストは完全に失われてしまう。
作画を気にしなければ、HELLBOYファンには馴染みのストーリーは十分楽しめる。一方、やはり作画はより重要であり、無視できない要素であるならば、B.P.R.D.シリーズを楽しむのは厳しいだろう。
もしコレクション不要、所有ではなく、読むだけでよい、ストーリーさえ追いかけられればよい、Kindle Unlimitedがお勧めだ。そのラインナップには、B.P.R.D.初期タイトルが含まれており、1か月分の会費だけで十分、元を取ることができる。