Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

Tully'sのコール

f:id:espio999:20201208105538j:plain
これは2005年に投稿したエントリーに加筆、修正の上、以前のブログから引き継いだものです。

私が日本で初めてラテ・スタンドを見かけたのは約10年前の神戸ハーバー・ランドだった。当時StarbucksもTully'sも日本進出しておらず、Seattle's Best Coffeeだけが、机に屋根をつけただけのようにこじんまりした屋台で出店していた。おそらくシアトル、神戸の姉妹都市提携に乗じたものだったのだろう。今やStarbucksをはじめとする、シアトル・スタイルのラテ・スタンドは都市部ではコンビニのように一般的な存在となった。

個人的にはTully'sが気に入っている。フレーバー・ラテを頼んでも、コーヒーの風味が感じられるからだ。Tully'Sで注文するとき、注文内容をバリスタへ伝える店員は、何か一声添えている。


「コン・ブリオ」とか、「コン・アモーレ」とか。その場では気になっていても、これまで調べたことはなかった。公式サイトに掲載されていたコラム『Vol.2 What is the meaning of "con amore?"』によると、

・「コン ブリオ」:「いきいきと」
・「コン パッシオーネ」:「情熱を込めて」
・「コン スプリトゥオ」:「元気よく」
・「コン センティメント」:「感情を込めて」

「コン・アモーレ」であれば「愛情を込めて」といったところか。かつて料理研究家結城貢は「料理は愛情!」とよく怒鳴っていたのを思い出す。エスプレッソ抽出はタンピングを除いて機械操作なので、いわゆる「愛情を込めた一杯」的な要素は感じないのだが。

さらに公式サイトには

その時々に作り出したい雰囲気に合わせて、コールを選んで使っています。

とも記載されていた。この「作り出したい雰囲気」とは、誰に(何に)対して作り出したいものだろうか。と言うのも私が耳にするのは、ほとんどの場合「コン・ブリオ」なのだ。

例えば、それが客の場合はどうだろう。その客から溌剌さを感じ取れなければ、元気や活気をもたらす応援をとして「コン・ブリオ」と言うだろうか。実際、とても忙しく徹夜の多い職場に勤務していたとき、頻繁に利用していた店舗でよく耳にしたのは「コン・ブリオ」だった。

あり得そうだが、以上の掛け声は客に対してのものではないだろう、と私は考えている。それは、いずれの掛け声も音楽の演奏法や発想記号など、作曲者が演奏者へ意図や考え方を伝えるものだからだ。だから掛け声の意図というのは、客に対してではなく、店内、それもスタッフに充てられているように、私には感じられる。
例えば店内の繁閑によって生じる、接客応対やカウンター裏作業のおざなり、倦怠、気の緩みを一喝するための掛け声かもしれない。

ローカルな隠語として用いられているのではないか、というコメントがあった。例えば「またあいつ来たよ」とか、「うるさそうな客だから気をつけろよ」とか、「カワイイ娘(カッコいい男)なのでおまけよろしく」とか。面白いし、あり得る!と思わせられたコメントだった。実際、スーパーや百貨店などでは、語られている内容とは異なる目的の館内アナウンスを流すところがあると聞く。

しかし実際のところ、これらは考え過ぎだろう。意味や雰囲気など微塵の意識せず、ただ語呂の良さや言いやすさで「コン・ブリオ」と、せいぜい「コン・アモーレ」時に挟む程度の使い分けているのが現実ではないだろうか。特にspirito、passione、sentimentoは語呂、音節、長さにおいて、言いにくいのではないだろうか。まず店員が発生する機会はないと思われる。

ちなみに冒頭の写真はTully'sとは全く関係がない、神戸亭のコーヒーだ。今や、お気に入りはコンビニ的ラテ・スタンドではなく、すっかり見かけなくなってしまった純喫茶だ。