あるソフトウェアを使い続け、使い慣れ、たとえバージョンが古く、サポート切れになり、時代遅れになったとしても、それが新しいOSでも問題なく動作し続けるのであれば、そのソフトウェアを使い続けたいのが、一般的なユーザーの求めることではないだろうか。その典型例の一つがAdobe Acrobatだろう。
そして、そのようなユーザーの希望を打ち砕くのがオンライン・ライセンス認証、いわゆるアクティベーション(activation)、オーソライザーション(authorization)と呼ばれるものだ。
たとえソフトウェアが問題なく動作していたとしても、何かの拍子でアクティベーションを求められた時、すでにベンダーがアクティベーション・サーバーを退役させていれば、アクティベーションは機能しない。そしてソフトウェアは使えなくなる。
これはAdobe Acrobatの永続版と呼ばれているものの現状でもある。Adobeは、すでにAcrobat XI以前のアクティベーション・サーバーを停止した*1。最新版である2020も、遅かれ早かれ、同じ状況に至ることだろう*2。
Our aging activation servers for earlier versions of Acrobat and Creative Suite (CS) applications had to be retired. Without the activation servers, these applications display an activation or connection error when trying to verify a license.
Affected applications include Creative Suite 2, 3, and 4, Audition 3, Acrobat 7, 8, and 9 (Standard and Professional), Acrobat X, Acrobat XI, and Acrobat 3D Version 8.
Activation limit reached or Sign-in failed error
先日対応したPC更改*3の影響から、長年使い続けたAcrobat X Standardが、この影響を受けてしまった。代替手段を含め、いろいろと模索している中で得た知見をまとめておく。次の3編に分けて投稿する。
この投稿は、その代替となるPDFエディターについて、まず買い切りライセンスで提供される日本企業のパッケージ版を紹介する。
買い切りライセンスのパッケージ・ソフトウェアとして販売されている日本企業の製品として、次の2つが典型的な代表例だろう。
「いきなりPDF」も、JUST PDFにも、異なる2つのバージョンが用意されている。機能上の違いについて、その詳細は公式サイトを参照してほしい。
両製品ともに、ほとんどの機能が重複しているのだが、あくまでもAdobe Acrobat Standardのクローン、あるいはPro相当の代替を求めるなら、選択肢は唯一、JUST PDF Proに限られる。
両社のサポートに直接確認を取り、明確に得た回答に基づくと、両製品の特長的な違いは、新規PDFファイルの生成可否だ。
「いきなりPDF」は既存のPDFファイル編集を対象としており、新規にPDFファイルを作成することはできない。例えば、スキャナを用いて文書を取り込み、PDFファイルとして出力することができない。一方、JUST PDFでは、Pro版に限り、それができる。
加えて電子署名などのセキュリティ要件にも応えるなら、安価な順に機能を比較検討することになる。
価格 | 製品 |
---|---|
3980 | いきなりPDF STANDARD |
6200 | JUST PDF |
8900 | いきなりPDF COMPLETE |
14900 | JUST PDF Pro |
注意したいのは、いずれの製品も、Adobe Acrobat同様のオンライン・アクティベーションを前提としていることだ。オープンソース・ソフトウェアの比較検討は避けられないにしても、試行錯誤中の代替手段を模索するなら、まずは検討する余地がある
いきなりPDF
www.sourcenext.com
STANDARDとCOMPLETEの大きな違いは、既存PDF自体の編集可否だ。ただ既存PDFにテキストや図を追加するだけならば、STANDARDでも対応可能だ。
PDF自体のテキストを修正したり、フォームに入力用のテキストボックスを作成したり、PDFそのものを作り替えるような編集には、COMPLETEが必要になる。
JUST PDF
www.justsystems.com
無印版とProをAdobe Acrobatと対比させると、次のようになる。
JUST PDF | Adobe Acrobat |
---|---|
無印 | Standardの縮小簡易版 |
Standard | |
Pro | Pro |
JUST PDF Proは、Adobe Standard Proの機能一通りを網羅している。従って、Adobe Acrobat Standardのクローン的にも機能する。
無印版とProの大きな違いは、2つある。
- 既存PDF自体の編集可否
- スキャナ取り込み文書のPDF化
ただ既存PDFにテキストや図を追加するだけならば、無印版でも対応可能だ。PDF自体のテキストを修正したり、フォームに入力用のテキストボックスを作成したり、PDFそのものを作り替えるような編集には、Proが必要になる。
加えて、スキャナで取り込んだ文書をPDF化するにも、Proが必要になる。例えば、俗に「自炊」と呼ばれるような、裁断した書籍をPDFファイルとして出力する必要があるならば、JUST PDF Proが唯一の選択肢となる。
自炊用途について特記すべきは、スキャン・イメージの自動補正にも対応していることだろう。以下は、ジャスト・システムのサポートへの問い合わせ、回答の引用だ。自炊ユーザーが必要とするだろう機能に対応している。
ジャスト・システム、インフォメーションセンターからの回答
いつも弊社商品をご利用いただき誠にありがとうございます。
お問い合わせいただいた件につきまして、ご連絡申し上げます。■JUST PDF 6 Proの機能について
>1.紙文書をスキャンしPDFファイルとして出力する
>比較資料に掲載されている「スキャナなーからPDF作成」に相当する機能について、
>例えば裁断した冊子(複数ページ)をスキャンし、単一のPDFファイルで出力する
>ことはできますか?はい、可能です。
スキャナーから取り込む際に、「繰り返しスキャンする」という項目がございます。
こちらをオンにすることで、スキャン後に、「続けてスキャンしますか?」の確認
ダイアログが表示され、複数枚を1つのPDFファイルとして出力できます。>2.1に関連し、スキャン・イメージの自動補正
>Adobe Acrobat Standardには、スキャン紙面の斜行、ならびに紙面上の文字列について水平、
>垂直を維持するような補正を自動的に行う機能があります。同等の機能を備えていますか?
>また該当機能を、既存のPDFファイルに対して実施することはできますか?スキャナーから取り込む際に、「ページの向きを補正する」の項目がございます。
こちらをオンにすることで自動的に補正がおこなわれます。既存のPDFファイルに対して実施する場合には、検索可能なPDFへ変換する
メニューで、変換の際に「ページの向きを補正する」の項目がございます。
ただし検索可能なPDFへ変換する場合、補正のみを実施することはできず、
PDFにテキストを含む操作が同時に実行されますのでご注意ください。上記方法以外に、「テキストと図の編集」のメニューでマウスドラッグして
手動で傾きを調整することも可能です。ただしいずれの機能でも、任意の角度を指定して調整することはできません。
あらかじめご了承ください。
>3.既存PDFファイル、ならびに1のPDFファイルに、次の設定をする。
>・右綴じ、左綴じ(右開き、左開き)の設定
>・ファイルを開いたときの初期表示状態の設定(表紙あり、見開きなど)
>いずれも、特に見開き状態でファイルを表示し際の、ページ並びに影響します。
>ソフトウェア上でのレイアウトだけでなく、ファイル中のプロパティとして設定を保持したいです。いずれも設定が可能です。
なお、ファイルを開いたときの初期表示状態の設定につきましては、
ファイル自体に個別の設定がされている場合はそちらが優先されます。
>4.既存PDFファイル、ならびに1のPDFファイル内のページをトリミングする。
>センチやミリなど、具体的なサイズを指定して、ページサイズが統一するよう微調整したり、
>ページ上下左右の余白を非表示にしたりします。対応しております。
センチには対応していませんが、ミリ/インチ/ポイント単位での調整が可能です。