Windows 11のISOメディアから、クリーン・インストール用のUSBメディアを生成するに際し、障害となることが2つある。
If your server platform supports Unified Extensible Firmware Interface (UEFI), you should format the USB flash drive as FAT32 rather than as NTFS.
Create a Bootable USB Flash Drive | Microsoft Learn
Windows 11 ISOメディアには、4GBを超えるファイルが収録されている。クリーン・インストール用のUSBメディアを作成する場合、このようなファイルは分割して、USBメディアへコピーしなければならない。
もし次のようなパーティション構成のUSBメディアを作成することができれば、このような対応は不要だ。
ブート・パーティション | FAT32 |
データ・パーティション | NTFS |
そして、このような構成のブート可能なUSBメディアは生成可能だ。Rufusのようなツールを使う必要もない。さらに付け加えると、このUSBメディアはWindows 11をサポートしないPCへのクリーン・インストールにも対応している。特別な方法を用いずとも、ハードウェア要件チェックを回避できる。
この投稿では、次の話題を取り上げる。
USBメディア
要件
インストール用のUSBメディアを作成するにあたり、次の要件を満たす必要がある。
- 最低容量、8GB
- ブート可能であること
以上の要求を満たすならば、USBメモリでも、SDカード+USBカードリーダーでも構わない。最適な容量のメディアが無かったので、この投稿では32GB microSDカード+カードリーダーを使用している。具体的には、次の製品だ。
パーティション
用意したメディア上に2つのパーティションを、次のように構成する。
パーティション | 容量 | フォーマット |
---|---|---|
ブート | 1024MB = 1.0GB | FAT32 |
データ | 残り全部 | NTFS |
パーティション構成にはdiskpart*1を使用する。以下のコマンドは、次のことを実行している。
- diskpart起動
- ディスク番号確認
- USBメディアのディスク番号を指定
- 1GB (1024MB)のパーティションを作成
- 1GBのパーティションをFAT32でクイック・フォーマット
- 15GB (15360MB)のパーティションを作成
- 15GBのパーティションをNTFSでクイック・フォーマット
🔎一連のコマンド、その実行結果
diskpart #ディスク番号を確認 list disk #ディスクを選択 select disk 4 #選択されていることを確認 list disk #1GBのパーティションを作成 create partition primary size=1024 #パーティション番号を確認 list partition #パーティションを選択 select partition 1 #パーティションをFAT32でフォーマット format fs=fat32 quick #15GBのパーティションを作成 create partition primary size=15360 #パーティション番号を確認 list partition #パーティションを選択 select partition 2 #パーティションをNTFSでフォーマット format fs=ntfs quick
パーティション・サイズはMB単位で指定する。1GB = 1024MBで計算する。この投稿では32GBのmicroSDカードを用いており、データ・パーティションとして15GBを指定している。容量を指定しなければ、空き容量全てがパーティションに割当される。
ディスク番号、パーティション番号は、ユーザーの環境によって異なる。操作対象となるディスク、パーティションが適切に選択されているか、操作前に”list ~”で確認するとよい。”*”が付与されているアイテムが選択されている。
以上の手順を完了すると、次のような構成のメディアが出来上がる。
Windows 11インストール・メディア
Windows 11のISOイメージは、次のサイトからダウンロードできる。「Windows 11 ディスク イメージ (ISO) をダウンロードする」からダウンロードする。
ちなみに、その他の項目の手順でUSBメディアを生成した場合、それを用いたインストールでは、ハードウェア要件確認に遭遇する。
作成したUSBメディアをWindows 11のクリーン・インストール用メディアに仕立てるには、ISOイメージからファイルを適切にコピーするだけで良い。ISOイメージをマウントしたら、次のようにファイルをコピーする。
ブート・パーティション | boot efi sources\boot.wim support bootmgr bootmgr.efi |
データ・パーティション | 上記以外の全フォルダ、ファイル |
ブート・パーティションへコピーする”boot.wim”は、フォルダ構成を維持したままコピーすること。つまり、フォルダ”sources”を作成し、その中へ該当ファイルをコピーする。
データ・パーティションには、ISOイメージに収録されている全フォルダ、ファイルをコピーしても構わない。
このメディアを使用してUSBブートすると、Windows 11のインストール・プロセスが始まる。Windows環境が残っている場合、次のいずれかの選択を求められる。
- アップグレード・インストール
- カスタム・インストール
クリーン・インストールの場合は、「カスタム・インストール」を選択し、後続のプロセスで、インストール先のドライブ上に存在しているパーティションを削除すればよい。ハードウェア要件確認に遭遇することなく、何も咎められずにインストールが完了するはずだ。
Windows 11をサポートしないSurface Proでの注意点
Surface Pro 5以前の、Windows 11がサポートしていないSurface Proにも、同様の手順でクリーン・インストールできる。とはいえ、個人的には既環境を上書きするアップグレード・インストールを試した上で、問題なければクリーン・インストールすることをお勧めする。Surface Pro特有の問題点に対処するためだ。
Type Cover portが死んでいる場合
Windows 11のクリーン・インストール中、タッチ操作が機能しない。Brydge*2のようなBluetoothキーボードも機能しない。もしType Cover portが死んでいる場合*3、インストール・メディアとキーボードをUSB接続するため、USBハブが必要となる。
Windows 11をクリーン・インストールしても、死んだType Cover portが復活することはない。単にWindows 11をインストールしさえすればよいのであれば、後述するMicrosoft指定の方法でアップグレード・インストールするのが良いだろう。
Secure Bootの解除
USBメディアから起動するためには、UEFIでSecure Bootを解除しておく必要がある。UEFIで、次の操作を実行する。
Secure Bootの解除
Surface UEFI > Security > Secure Boot > Change configuration > None
ブート順序の変更:USB Storageを最優先へ
Surface UEFI > Boot configuration > Configure boot device order
USBメディアをポートへ挿入し、再起動する。
Windows 11のインストールが正常に終了したら、Secure Bootの設定を戻す。
Surface UEFI > Security > Secure Boot > Change configuration > Microsoft only
余談
第7世代以前のIntel Core iシリーズに対応しないことで、世間を騒がせていたWindows 11であったが、騒動は自然に鎮静化していった。固定されたタスク・バーに代表される望まない制約や、Windows Update提供が突然打ち切られるかもしれないリスクは、主要な理由の一つだろう。これらを嫌気してWindows 11を敬遠し、Windows 10を継続利用しているユーザーは多い。
それでも諦めきれないユーザーにとって、要件を満たさないPCへのインストール方法を、Microsoftが公表していることの影響も大きいだろう。インストール中のハードウェア要件確認をバイパスするための措置だ。どうしてもWindows 11を使いたいユーザーは、こちらの手段でインストールすることになる。
この手順が広まったことによって、少なくともインストール可否についての要件充足は、事実上、無効化されてしまった。要件を満たさないPCへのインストールは、基本的に次の手順のいずれかを経たアップグレード・インストールとなる。
しかし実際のところ、特別な対応をせずとも、今回紹介したUSBメディアを用いてクリーン・インストールすることで、ハードウェア要件確認を回避できるのが現実なのであった。