ちょうど2023年末にゲーム『ブラックオニキス』を遊んでいた。そのまま、その続編である『ファイヤークリスタル』にも着手するつもりだったのだが、カルマの異常に気づいたところで、対策となる妙案が思いつかないまま、着手までに1年を要したのだった。
12月23日に着手し、昨晩、1月3日の午前1時ごろに最終フロアの大広間到着、本日午前中に再開して、Fire Crystalに到達した。
『ファイヤークリスタル』は、MSX版の『The Black Onyx II』を遊んだことがある。「まほうのあいことば」が分からなくても、大広間付近で逃げ回っていれば、逃亡成功後に大広間内に入っていることがある。それから「ケイマトビ」を繰り返してブラック・タワーの中に入ることはできたのだが、そこで魔法Astralを使い、タワーを上る発想がなかった。
今回はクリアできる前提で着手したところ、プレイ感覚がMSX版とは、かなり異なることに気づいた。歳を重ねた経験から、MSX版で遊んでいた当時は気づかなかった、気づけなかった発見もあり、色々とまとめてみたくなったのだった。
色々とまとめて行くうち、かなり長くなってしまった。そこでプレイ前の予習に通じる、凶悪な難易度の要因を考察した考察編、マップなど、実際のプレイに通じる情報のプレイ編に分けることにした。
この投稿は考察編だ。
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現実的な遊び方
『ファイヤークリスタル』の難易度、その凶悪さは発売当時から評判だった。1984年当時、ゲーム・バランスは考慮されないどころか、事実上、そのような概念が周知されていなかった。現在の視点から高難易度の由来を考察すると、その難易度に応じた、現実的な遊び方に行き着く。
まず難易度上昇の要因を考察すると、次の点が挙げられる。
- 当時のプレイ環境
- トラップ配置
- トラップとエンカウントの相乗効果
- 強さの格差拡大
- 魔法の限界
これらの相乗効果により高められた難易度を前提に、好意的に『ファイヤークリスタル』を解釈すれば、それはRPGと言うよりも、リセマラを含む、地道な単純作業を繰り返す脱出ゲームと言う趣だ。
つまり、可能な限りセーブ回数(自ずとロード回数も)を少なく、Fire Crystal到達点である脱出ポイントを目指すのだ。
セーブ回数を減らし、可能な限りゲームを続行し続けることで、固定配置のモンスターを掃討できる。その分、ダンジョン探索が楽になる。モンスターとの遭遇機会が減少すれば、キャラクターの成長機会も減少することになるのだが、成長したところで難易度が緩和するほどの変化はないのだ。
結局リセマラ:当時の事情+ゲーム要素の相乗効果→難易度の凶悪化
当時のプレイ環境
『ファイヤークリスタル』は1984年に発売されたゲームだ。カセットテープを保存メディアとして利用していた時代だ。データをロードするだけでも数分を超えることもある時代でもある。この事情から、今で言うところのリセマラ(リセットマラソン)は対応可能ではあれ、時間的なコストのトレードオフを伴うものであった。
現在、特にエミュレータ特有のステート・セーブ*1は、このトレードオフ解消の助けにはなるのだが、難易度の緩和にはつながらないのだ。
トラップ
トラップの中には、容易に方向感覚を狂わせられるものがある。
- ターン・テーブル
- 方向キー反転*2
- 固定ワープ、ランダム・ワープ
これらが視界の変化しないポイント、例えば、十字路中央のターン・テーブル、直線通路途上での方向キー反転、1マスの小部屋同士がつながったワープに配置されており、トラップの存在を気づき難くしている。特徴的なのが添付した4Fの構造だ。
魔法Astralにより、事実上、ダンジョン構造はオープンだ。しかしトラップ配置は分からない。従って、プレイヤーは必然的に次の手順を強いられることになる。
- 魔法Astralを覚えるまで魔法使いを育てる
- 魔法Astralを駆使してマップを作成する
- マップを見ながらトラップの存在を察知する
トラップとエンカウントの相乗効果→エンカウント率上昇
『ブラックオニキス』同様、モンスターは固定配置のものが多く、その多くがワープ・ポイントにも配置されている。この特性がワープと相互作用し、連戦を強いられることがある。
- ワープ・ポイントに進入→戦闘
- ワープ先に到達→戦闘
逃走するにしても
- ワープ・ポイントに進入→戦闘→逃走
- ワープ先に到達→戦闘→逃走
- ランダム・エンカウント
固定配置のモンスターは、一度倒せば、次回のデータ・ロードまで復活しない。つまりゲームを遊び直すたびに、固定配置のモンスターは復活し、これにランダム・エンカウントも加わる。結果として、モンスターとの遭遇戦を否が応でも繰り返すことになる。
エミュレータならば、ステート・セーブを繰り返すことで、この状況を緩和することができる。ゲームが提供するセーブ、ロードを活用せず、ステート・セーブ、ロードを繰り返すことで、次第に固定配置モンスターは掃討され、究極的にはランダム・エンカウントのみの状態を作り出すことができる。
しかし、それでも難易度の緩和につながらないのは、強さの格差が拡大するからだ。
ちなみに、このエンカウント率上昇は、戦士を強化するための意図的な仕掛けだった、とも考えられる。事実上、戦士のレベルは上がらず、その強化手段の一つが戦闘後にランダム・ドロップするアミュレットだった。『ブラックオニキス』の資金稼ぎ*3同様、効率的にアミュレットを狙うには、固定配置モンスターを狙うのが良い。
しかし、強さの格差拡大をアミュレットで埋めるにしても、気の遠くなるほど単純作業繰り返すならば、リセマラも現実的ではない。
強さの格差拡大
前作『ブラックオニキス』で成長させたキャラクターを引き継いで遊ぶ前提もあり、『ファイヤークリスタル』中盤頃から、ブラックオニキス終盤レベルのモンスターが登場する。当然、『ファイヤークリスタル』終盤で登場するものの強さは、それをさらに上回る。
一方、キャラクターたちの成長機会は少なく、成長幅も小さいものだから、ゲームが進捗するほど、その格差が拡大する。
この格差を埋めるのが魔法のはずなのだが、そこにも限界があるのだ。
魔法の限界
『ファイヤークリスタル』では、いわゆるリソースとしてのMPと、ステータスとしての魔力が共通の値で表現されている。つまり、MP最大値の状態で攻撃魔法を唱えれば、その最大効果を期待できるものの、半減状態のMPで同じ魔法を唱えれば、その効果も減少する。
つまり、戦闘中に同じ魔法を使い続ければ、使うたびにダメージは減少していく。
同様に魔法強化にも限界がある。Shield、Enhance、Speedという戦士を強化するための魔法だ。これらの魔法を戦士にかけることで、そのパラメータが上昇し、その効果はゲーム中、持続する。成長機会の少ない戦士にとっての、限られた強化手段だ。
パラメータ変化の持続は、モンスターの魔法にも同様に作用する。レベル1の魔法、Spinnerはハヤサのパラメータを下げる。モンスターに、この魔法をかけられると、下げられたハヤサも持続する。
そこで強化魔法を繰り返しかけ続けることになるのだが、常にパラメータが上昇するとは限らないのだ。パラメータが高いほど、下降させられることが多くなる。1回かける度に、魔法Divineによる効果確認を繰り返すことになる。パラメータが下降したことが分かれば…結局、リセマラなのだ。
クリア時点の戦士、魔法使いのパラメータについて、次の状態を上回る上昇を確認できなかった。いずれもレベル9の状態だ。
ヨロイ | ブキ | ハヤサ | |
---|---|---|---|
戦士 | 36 | 32 | 29 |
魔法使い | 18 | 14 | 11 |
しかし、これでも最終フロアどころか、3F以降、魔法をかけられれば瞬殺か大ダメージ、物理攻撃にしても、カラー・ダンジョン以降は基本的に瞬殺される。
こうなると1歩ごとにステート・セーブし、固定エンカウントのモンスターに遭遇すれば、倒せるモンスターか、友好的な冒険者に巡り合うまでリセマラを繰り返す以外、手はなくなるのだ。
MSX版との印象の違い
ここで気になったのがMSX版との印象の違いだ。MSX版では、特に強化魔法の限界がバランス調整されていたようなのだ。
当時、魔法をかける都度、divineで効果を確認するようなことはしなかったのだが、それでもモンスターの魔法で瞬殺されるような経験は少なく、最終フロアでモンスターを倒せない、少なくともほとんどダメージを与えられない、などの経験はなかった。
最終フロアにしたところで、逃走する場面はあれ、敵モンスターを瞬殺、あるいは数手で撃退できる程度には強力だった。
余談
ムック『蘇るPC-8801伝説 永久保存版』
2000年代後半、エミュレータとレトロゲーム・イメージを、exeファイルとして一体化したものを収録したムックが多数出版される時期があった。『ブラックオニキス』は、ムック『蘇るPC-8801伝説 永久保存版』*4に収録されていた。しかも続編の『ファイヤークリスタル』までもが一体化されていたのだから、私のように「ただ知っているだけ」の人にとっては、実際に遊んでみる絶好の好機だった。実際に遊ぶ時間があるのかを考える以前に、まず「これは買うしかない」と思わせられた一冊だった。
収録されていた『ファイヤークリスタル』について
収録されているランチャー、並びに実行ファイルはWindows XPを対象としたものだが、Windows 11 23H2でも問題なく動作している。実行に際し、XPモードなど、実行ファイルのプロパティを操作する必要もない。
収録されているランチャーから呼び出されるのは、『ブラックオニキス』、『ファイヤークリスタル』とエミュレータが統合されたexeファイルだ。exeファイル、ならびに発売時のマニュアルがPDFファイルとしてスキャンされたものが、それぞれ次のパスに格納されている。
%PROGRAMFILES(X86)%\ProjectEGGPlus\PLSE010\game\ブラックオニキス&ファイアークリスタル %PROGRAMFILES(X86)%\ProjectEGGPlus\PLSE010\manual
PC-8801で動作させていたのと同じセーブ、ロードに加えて、エミュレータによるステート・セーブ、ロードにも対応している。それらのデータは次のパスに保存されている。バックアップが必要ならば、必要なファイルを、あるいはフォルダごとコピーしておけばよい。
%APPDATA%\AmusementCenter
それぞれのファイルは、次の役割を担っている。
black_onix.ini | キーボード・マッピング |
black_onix.sav | PC-8801動作でのセーブ情報 |
black_onix.SV* | エミュレータのステート・セーブ情報 |
ムック『蘇るPC-9801伝説 永久保存版』
気付いてくれた読者は、この投稿に辿り着いた流れから、次の記事も参照してくれるのだが、はてなの関連記事では、なぜか紹介されることがない。ムック『蘇るPC-9801伝説 永久保存版』に掲載されたWIZARD98という、”バックアップ”ツールに関する記事だ。関心があれば、同様に目を通してほしい。
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ちなみに、ムック『蘇る~』のシリーズは、PC-9801が2冊、PC-8801が1冊発刊されている。いずれも2010年代手前の、人々が本屋を離れ、Amazonで本を購入することが本格的になってきた時期だ。発刊されたことに気付かなかった読者は多かっただろう。
おそらく、多くの読者にとって、事実上の本体はムックではなく、付録CD-ROMに収録されているレトロゲームということもあってか、古本の実売価格は高騰している。古本を購入する際には、付録CD-ROMが添付されているのか、動作するのかについて、くれぐれも注意してほしい。
また関心のある読者は、楽天も一緒に検索してみるとよいと思う。「"蘇るPC" + "伝説"」で検索できるリンクを用意しておいた。
search.rakuten.co.jp