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Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

ファミレスを享受せよ

oissisui.itch.io

ゲーム『ファミレスを享受せよ』*1(以下、『ファミレス~』)はコマンド選択式のアドベンチャー・ゲームだ。「ファミレス」と言うのだが、SFファンタジーとでも呼ぶべきジャンルの作品だ。時計がなく、永遠に時が止まっているかのような異空間で、あたかもファミレスにて、ドリンクバーと雑談で無為に時間を過ごすがごとく、プレイヤーはストーリーを進めていく。

「推定プレイ時間30分~」とされていたので、1時間程度で終わるだろうと、高を括って遊び始めた。結果、月曜日から、思わぬ夜更かしをしてしまった。
詰まるところはなく、ストーリーに沿って、選ぶべきコマンドを自然に選択できるのだが、要所ごとに読解を要するのだ。結局、クリアまでに2~3時間程度を要することになった。

三色の世界

三色のパレットで描かれた静止画の印象、センスが良く、20世紀的なドット絵のレトロさを感じさせない。昔遊んだアドベンチャー・ゲーム、特にMSXのそれを洗練させたような雰囲気を感じた。

数色しか用いないのは、開発者、月間湿地帯/おいし水の作風なのだろう。Webサイトに掲載されている2023年の作品を見ると、黒と差し色を除いて、いずれも三色しか用いていない。

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『ファミレス~』の静止画も、この作風を継承している。『ファミレス~』の静止画が印象的なのは、青一色で現実世界と影を、黄色一色でファミレス店内を含む非現実世界と光を表現していることだ。意図された演出なのかは分からないが、彩色によって、静止画で描かれている世界が、どちら側なのかを自然に判断できる。

ファミレス的な何か、共同幻想としての「ファミレス」

何より特徴的であり、魅力的なのが、「ファミレス」を思わせる空間を舞台に、会話とドリンクでストーリを進めることだろう。ストーリーは大別して3パートに分けられる。

  1. 全員と知り合う
  2. 世界観の背景を知る→間違い探し
  3. ストーリーの背景を知る

会話は全編を通じて共通の、最後にドリンクが重要な小道具になる。実はドリンクバーが、現実のドリンクバーではないことに、ある時点でプレイヤーは気付かされる。実際にはドリンクバーどころか、「ファミレス」すら、現実のそれを模したものではないことが分かるのだが、さらに言えば、タイトルにもある”ファミレス”自体が実態を反映していない”概念”であることにも、思いを馳せるかもしれない。

深夜のファミレスと言えば、想像するのは次のような光景ではないだろうか。

  • 閑散とした空間
  • ドリンクバーと雑談
  • 目的もなく、気ままな時間を過ごす

しかし新型コロナ流行以後、まず深夜営業がなくなってしまった。流行前に目を向ければ、深夜のファミレスは、それほど閑散な空間ではないのだった。特に終電以降の時間帯は、始発を待つ人達、当座の行き場がない人達で溢れかえるのだ。
電車とは無縁の、郊外のファミレスに目を向ければ、おそらく午前0時から2時の間で閉店していたのではないだろうか。閑散とした時間はあったかかもしれないが、それほど長くはなかったはずだ。深夜に相当する営業時間が短いので、それほど気ままに過ごすこともできなかっただろう。

おそらく想像の光景は、青山ブックセンターが24時間営業していた時代、その界隈が本当に眠らない街であった当時のカフェ、ファミレスを経験した人、あるいはそれを知る人達だけに見えるものではないだろうか。
そしてもちろん、ドリンクバーと雑談は複数人で訪問してこそできるものだ。それらの光景を私自身が実体験したことがないものだから、それらがファミレスという空間についての共同幻想のような気がしてならないのだ。

そしてゲームには、そのような共同幻想に合致するような舞台設定上の仕掛けが施されている。

システムの欠落上、漂着は起こりうる事態です。

現実の場所が、想像したような場所ではあり得ないのに、なぜかそのように想像し、期待してしまう。そして偶然、そのような場所にたどり着いてしまったとしたら、それはまさにシステム上の欠陥、漂着と呼ぶにふさわしいだろう。

開発者が意図した演出ではないと思うのだが、私の勝手な思い込みが整合性を見出してしまった。

間違い探し

これはまさに、言わずもがなのオマージュ要素だ。そして、おそらく開発者は、この間違い探しの攻略法を分かったうえで、少々意地悪な出題をしているように感じた。

『ファミレス~』に限らず、間違い探しには攻略法がある。絵を左右に並べて、両方の絵を重ねるように裸眼立体視するのだ。答えに当てはまる場所は、左右の絵が合致しないので、チラついて見えるようになる。
そのような具合なので、間違い探しのスクリーンショットを取得し、90度回転して裸眼立体視するのが効率的だ。

そして、おそらく最後の間違い探しは概念的な意図も孕んでいるのだろう。それは全ての間違い探しをクリアした後に読むことができる文章に記されていることにも通じている。描かれているものが異なっていても、それは本質的には同じものであり、ただ表現が異なっているだけ、ということなのだろう。
ちなみに、この文章には、ゲームのストーリーに直接関わっている人物が1名、間接的に関わっているもう1名が登場している。

2通りのエンディング+α

webサイトでは、2つのエンディングが用意されていることになっている。True endとanother endの2通りとすれば、さらにanother endには細部の異なる2通りが存在している。エンディングを迎える際の、王様の状態によって、王様のセリフが異なっているのだ。

この分岐は最終エピソード、誰に再起錠剤を飲ませるか、誰にトークンを渡すか、によって生じる。それらを実行する前にセーブしておくと、異なるエンディングを効率よく確認することができる。

参照

oississui.com