Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

Windows 11の気になるところ、その考察

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Windows 11が公式に発表された。実際にはWindows 10 21H2に相当するはずなのだが、数々の新機能に加えて、あまり触れられていない事柄を前提に、心機一転を図りたいのだろう。例えば、先日投稿したTPM 2.0、UEFIの話題*1だ。未明からアクセスを集めている。

TPM 2.0、UEFIの強制には、Microsoftが望むセキュリティ環境を強制する意図が透ける。さらに言えば、やはりOS更改に伴う、PCの買い替え需要も狙っているようだ。特に、あまり大々的に触れられていないところに、その意図が見え隠れする。

そのような事柄を、考察交じりにまとめた。

第7世代Core iシリーズの切捨て→買い替え需要喚起

Windows 11が対応しているCPU、特にIntel Core iシリーズでは、第8世代以降をサポート対象としている。まだ気付いている人が限定的なのか、IT関連メディアも含めて、なぜか紹介されない話題だ。しかし、ユーザーには最も影響のある話題だと、私は思う。

現時点でのWindows 11が要求する仕様では、次のように記載されているのだが、実際のところ、対応CPUの一覧には、第7世代以前のCode iシリーズは掲載されていない。

1 ギガヘルツ (GHz) 以上で 2 コア以上の64 ビット互換プロセッサまたは System on a Chip (SoC)

docs.microsoft.com

そして、Microsoftが配布している互換性確認(Microsoft Health Check)が、Windows 11対応可否を明言する。未対応のPCでは、この投稿冒頭に掲載した結果が表示される。
現状、Windows 10 21H1が、問題なく快適に動作していても、TPM 2.0+UEFI環境で動作していても関係ない。

PCを構成する個々のパーツの性能が向上し、ユーザーも不足を感じる機会が減少したことで、買い替え需要が減少し、製品が長寿命化している。そのため、PCを半ば強制的に更改させ、PCの買い替え需要を喚起する意図があるのだろう。
とはいえ、将来数年の半導体不足が予想されている時勢でもある。一気にシェアを取りに行こうと思えば、従来のWindows 10環境も取り込むのが妥当だと考えるのだが、次のように考えることもできる。

Microsoftは、いわゆる「レガシー」資産の互換性を維持する会社だったのだが、ハードウェアについてはApple流に、ある程度で切り捨てる方針へと転換したのかもしれない。

Windows Vista化:Windows 11が敬遠される可能性

Windowsだからといって、必ずユーザーが付いてくるものでもない。これまでWindows ME、Vista、8のように、何らかの理由でユーザーから敬遠されたものがある。Windows MEは、言うなればWindows 2000に負けた。Windows 8はスタート・メニューが受け入れられなかった。Windows Vistaを避ける理由は、今となっては意外性があるだろう。要求が高すぎたのだ。特にGPUだ。当時、GPUは今ほど一般的な存在ではなかった。
特にエンタープライズ・ユーザーはあからさまに無視した。ビジネス上の必要性が全くないからだ。この結果、エンタープライズ・ユーザーの多数派は、

Windows XPWindows 7Windows 10

という移行パスを辿り、現在に至っている。面白いことに、コンシューマ・ユーザーも同じ経路を辿った。

運用、作業担当者の感慨はともかくとして、セキュアブートの強制は、エンタープライズ・ユーザーにとっては歓迎だろう。PCのライフサイクル・マネジメントが整っている企業であれば、CPU要件も問題視しないだろう。
とはいえ、コンシューマ・ユーザーはどうだろうか。展開次第では、Windows 11はVistaのように無視される存在となる可能性が感じられる。Windows XP、7がサポート期間を超えても、しばらく生き残っていたように、コンシューマ・ユーザーがWindows 11の代わりにWindows 10 21H1を想定以上に長く使い続ける可能性はありそうだ。

Microsoftによるライフサイクル・コントロール

PC自体があまり儲からないビジネスとなり、メーカー製デスクトップPCの存在は、ほぼ消えてしまった。Intelはすでに、マザーボード市場からは撤退しており、代わりにNUC*3という小型PCを扱っている。ノートPC型のNUCも存在するのだが、これはメーカーのリファレンス用としてしか販売されていない。

店頭に並んでいるモデルのほとんどは、ノートPCや2-in-1だ。接着剤が多用された部品構成で、ユーザーによる分解がしにくい。最近は部品交換を伴う修理も受け付けられず、再整備PCとの交換が一般的だ。この供給形態はライフサイクルがコントロールしやすい。実際、製品に対する自動更新期間を明確に定め、事実上の「切捨て」が明示されている製品が存在する。好例がChromebookだ。
support.google.com
Appleは事前にライフサイクルを明示せず、アップデートの発表とともに「切捨て」を発表するスタイルだ。Microsoftも同じスタイルを採用しようとしているように見える。

自作PCの衰退

マザーボード・メーカーの対応も気になる。OSでライフサイクルが決定されてしまうマーケットに、マザーボードを供給する意義は薄れる。PCの自作では、必要に応じて、必要なパーツを交換、拡張することで、製品寿命を延長しながら、リーズナブルに長く使い続けることができる。Microsoftは、この供給モデルは気に入らないだろう。Windows 10以降、OEMライセンスを、CPUやHDDなどのパーツ単位に結びつけたり、PCのハードウェア構成変更を察知して、ライセンス上の警告を発するなど、何かと自作PCユーザーに不利な仕掛けを実装している。
マザーボード・メーカーにも、自作PCユーザーにもメリットが無くなりつつある。

マザーボード市場の頼みの綱は、特にハイエンド構成を求めるゲーミング市場ではないだろうか。この市場には、まだGPU交換というカスタマイズの需要がある。加えて、ゲームの実行パフォーマンス追及が主眼なので、OSに対する強いこだわりはない。例えばProtonのような存在だ。WindowsゲームをLinux上で動作させるための中間レイヤーとして、Steamを運営しているValveが提供している。目的のゲームが動作しさえすればよいユーザーにとっては、Windowsにこだわり続ける必要はない。
www.protondb.com
マザーボード・メーカーは、いつまで現状の供給モデルを維持するか、あるいは、どこかでWindowsに追従しないビジネスを展開するだろうか。

Windows Insider Preview Builds(追記、2021年6月26日)

おそらく、Windows 11は第7世代Core iシリーズ以前のCPUでも、動作はするのだ。実際、Windows Insider Programの最低要件を満たせば、Windows 11のハードウェア要件を満たさずとも、Release Preview ChannelまではInsider Preview版が配布される。
blogs.windows.com

次のように警告されているのだが、ポイントは「a degraded experience」だろう。

Warning: Installation on PCs below Windows 11 hardware requirements can result in a degraded experience & some features may not work properly.

いくつかの機能が適切に動作しない可能性(some features may not work properly)が問題とはいえ、それはスペック不足とは異なる話題だ。世代間のCPU機能差異など、決定的に欠如している要素に依存するものであればともかく、本質的には(Microsoftが想定している)ユーザー体験を提供できないことが意識されており、それを提供するに足るスペックの環境だけを相手にしたいのだろう。端的に言えば、現時点での本命は第10世代以降のCore iシリーズだ。

Intel expects to deliver the broadest range of computing experiences for Windows 11 this year and beyond, with 10th Gen, 11th Gen and future generations of Intel Core processor-based platforms

Intel Core Processors and Intel Bridge Technology Unleash Windows 11...

ちなみに、HW要件、WIP指定要件の両方を満たせなくとも、Dev ChannelのInsider Previewは配布される。しかしこれは限定的な例外対応(Limited Exception)とされており、適用期間が終わればWindows 10に戻さなければならない、とされている。

Limited Exception: PCs will be allowed to preview Windows 11 updates only via flighting until General Availability. PCs will then need to take action to go back to Windows 10 and will not be eligible for future Windows 11 Preview builds.

画面中央のスタート・メニュー→大画面、高解像度モニタへの対応

スタート・メニューの配置が、画面四隅から中央へ変更された。これは昨今の大画面、高解像度モニタ、横長のモニタ、マルチ・モニタ環境を意識したMicrosoftなりの回答ではないか、と感じた。スタート・メニューが画面四隅で展開されるたびに、ユーザーの視線、あるいは頭がその方向に振れる。
私は、27インチ、4K解像度をdot-by-dotで利用している*4。私の場合、左上コーナーがスタート・メニューだ。高々27インチでも、やはり展開時に視線は左上に動くし、頭も動く。30インチ超の湾曲した、ワイド・スクリーンを利用しているユーザー、複数画面を利用するユーザーであれば、尚更のことだろう。
もしメニュー表示が画面中央に固定されていれば、ユーザーの視線、頭は固定されるし、身体的負担も軽減する。何より集中力も維持しやすくなるだろう。何せ、フォーカス・モードなど、何かと「生産性」が意識される世の中だ。外見上の変化がアピールされやすいが、ユーザーに影響する現実的な改善点は、これではないかと思う。

Androidアプリ

これはMicrosoftの戦略にとって意義深いところだと思う。WSLでLinux環境を取り込む、Officeのwebサービス展開や、VSCodeの様な開発者向けツールのリリースなど、以前からMicrooftは全プラットフォームへの展開、あるいは取り込みを意識している。今回の実装によって、そのアプローチがさらに広がる。

Apple対抗

AppleはARM対応によって、次の構成を実現した。

MaciPhoneアプリが動作する。「技術的には」iPadMac化することもできる、しかし対応しない。
同様のコンセプトをMicrosoftなりに取り入れた結果が、Androidアプリ+自由なアプリストア、ということなのだろう。

Microsoftは、.NET MAUI (Multo-platform App UI)で、iOS端末をPCに接続して開発する機能を実装している。利用するには、Apple Developer Programの加入は避けられないのだが、Microsoftは自ら対応可能な範囲まで、確実に駒を進めてきている。
docs.microsoft.com

Chromebook、Anrdoidタブレット対応

Androidアプリ対応によって、MicrosoftSurface DuoのようなAndroid端末の新製品を用意することなく、Chromebook、Anrdoidタブレットの市場に参入できる。Surface Goや、他社の廉価なWindowsタブレットが、それらへの対抗製品になるからだ。

加えて、やはり.NET MAUIによって、Android開発も捉えている。Appleよりもシビアなのは、Windowsだけで開発からリリースまでを完結できる可能性が近づいていることだ。
devblogs.microsoft.com

Wintel (Windows + Intel)体制

www.intel.com
IA (Intel Architecture)ハードウェアとWindows/Mac OSは密接に関わってきたというか、事実上、相互にバンドルされているも同然の製品だった。そしてARM対応によって、この体制を破壊したのがAppleだった。MicrosoftもARM対応路線は捨てていないのだが、Wintel体制は、さらにしばらく続きそうだ。というのも、Androidアプリ対応はIntel Bridge Technologyに支えられているからだ。

事実上、ほぼ全てのAndroidアプリはARM環境を前提としているし、MicrosoftがARM路線に切り替えれば、Wintel体制は崩壊する。とはいえ、それまでにMicrosoftMicrosoft Office、とくにその特にパッケージ版のユーザーに、webサービス版へ乗り換えてもらう必要がある。クラウドからの収益を除けば、Microsoftの収益源はMicrosoft Officeライセンスだからだ。
あるいは、ARMでのx64エミュレーションを洗練させる必要がある。これはまだWindows Insider Programの段階で、まだ正式にはリリースされていないのだ。
docs.microsoft.com
answers.microsoft.com