Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

めんどうなことしないうまさ極みレシピ 激烈美味しいストレスなし103品

めんどうなことしないうまさ極みレシピ 激烈美味しいストレスなし103品
この書籍で紹介されているのは、いわゆる手抜きレシピだ。「手抜き」というのは

  • 手間をかけない
  • 手間がかからない

ということだが、意図してそうするか、結果としてそうなるのか、では同じ「手抜き」でもニュアンスが異なるだろう。この書籍の場合は後者だ。それもかなり効率を重視した結果として到達する「手抜き」だ。

「手抜き」に伴う後ろめたさ、効率重視に伴うストレスのような気持と無縁なだけでなく、紹介されているレシピの構成、新規性、そして満足感から、思わず紹介したくなる程、内容のある書籍だった。

親切、結果としての明解な分かりやすさ。

書籍一通りに目を通して、まず感じたのは親切さだ。料理は材料を揃え、レシピを知ればできるわけではない。使用機会の乏しい、入手しにくい材料もあれば、レシピの解釈、その実践につまづくこともあるだろう。そのような点へのサポートについて、本書はことごとく気が利いている。

料理には独特な表現がある。例えば「ひとつまみ」、「1かけ」だ。あるいは弱火~強火とはどれくらいなのか、これらは具体的にヴィジュアルで明確に示されている。
また電子レンジで温める時間とワット数、めんつゆの濃縮度と分量の、匙数と、単位量(ml)による換算表も掲載されている。

本書の冒頭で、用いる調味料、主材料を紹介している。珍しいもの、例えばスパイスや特別なソースに類する物は一つも含まれていない。せいぜい使用頻度の低いゴマや片栗粉が含まれているくらいだ。結果として、特定のレシピを作るからと、そのためだけに用意する食材は、基本的にない。
ただ一つ特筆すべきことがある。お酢が含まれていないのだ。後述するのだが、このようなアイデアが本書の肝に通じている。

レシピのポイント

本書のレシピは全て3~4ステップの、ほぼ共通の段取りで実践できるものばかりであることが、個人的にはポイントに感じた。具体的には

  1. 材料の準備(切る、下味)
  2. 材料を混ぜる
  3. 加熱
  4. 仕上げ

加熱にはフライパンを用いるものもあれば、電子レンジや炊飯器の場合もある。

書籍で紹介されているレシピは、次の4点に基づいて章立てされている。

  • 計量しない
  • 包丁を使わない
  • 余らせない
  • 火を使わない

これらはポイントではなく、あくまでも章立てごとのテーマだ。全てのレシピが、これら全てを満たしているわけではない。あるレシピは包丁を使わないかもしれないが、基本的に食材を切るのに包丁は必要だし、計量しないとはいえ計量スプーンはほぼ全てのレシピで用いられる。

イデア

レシピを知らない料理を作りたければ、インターネット検索をすれば解決する世の中だ。あえて料理本を購入するきっかけと言えば、料理本のモチーフであったり、未知のアイデアだったりするだろう。特に自炊生活者となればなおさらだ。
例えば市販のミートボール(ハンバーグでも可)を揉みつぶし、調理済みのひき肉代わりに用いる、そんな思いつきそうなアイデア以上に、個人的に感銘を受けたのが次のポイント、レシピだった。

お酢の代用としてのもずく酢

冒頭で、必要な調味料にお酢が含まれていないことに触れた。お酢が必要なレシピは、本書ではもずく酢を用いるのだ。その手があったか!と感嘆するポイントだった。もずく酢ならば、小パックなので使い切りできる。もずく酢は、次のレシピで用いられている。

  • もずく酢豚
  • 鶏となすのさっぱりウマ酢いため

私の自炊生活では、お酢は一度も使ったことがない。必要なレシピを実践しないのではなく、その匂いが苦手で、それを用いる調理を自分でやりたくないのだ。どうしてもお酢が必要な場合は、**ビネガーの類を用いていた。もずく酢での代用は、これを変えられるかもしれないアイデアだ。

食材としてのあたりめ(するめ)の活用

あたりめ(するめ)を食材として活用する中華料理があるとはいえ(余談を参照)、それを自炊で再現することはないだろう。再現するにしても切り身のイカを用いるのではないだろうか。何より戻す手間があるし、本格的にやるなら、かん水を用いる。そしてかん水を抜く手間もある。
本誌では次の2レシピが紹介されている。

  • あたりめラーメン
  • あたりめめし

前者はあたりめを水で戻す、後者は炊飯器で炊き込むレシピだ。

浅漬け白菜豚バラ鍋

中華鍋の一つに酸菜白肉鍋というものがある。町中華でも特に中国人が営業している中華料理屋さんで出してくれるような料理だ。それもメニューには掲載されておらず、壁に写真が貼られているだけ、日本人向けに供することを意識されていないような料理だが、私はこれが好きだ。
浅漬け白菜豚バラ鍋のレシピで、この鍋に近いものを手軽に再現できる。

大葉のナムル

これはアイデアだ。自炊生活、特に一人暮らしで困るのが、一食分、一人分の食材調達が難しいことだ。結果として食材を余らせたり、使用機会に乏しかったり、日持ちしない食材ならば無駄にしてしまうこともある。大葉は、そのような食材の典型だ。
このレシピを知っているだけで、大葉を躊躇なく買うことができる。一食分を使ったならば、残りはナムルにすればよいのだ。

海苔バターつくだに

作り方は知っているけど、作らない。作ろうとも思わなければ、むしろ買うことがデフォルトになっている食品の典型が海苔の佃煮、いわゆる「ごはんですよ」だろう。
海苔の佃煮にバターを入れるというのは思いついたことがない。これは実験的な意欲をそそるレシピだ。実践も簡単にできる。

余談

あたりめ(するめ)のような乾物は、本来は長期保存のための手段であり、戻して食材として用いる。長期保存の必要がなくなり、冷凍保存の進歩により鮮度を保ったまま保存できる現代では、乾物を用いる必要性は失われた。
しかし乾物を戻して、食材として用いる技法は、いわば伝統工芸のように「継承」されるような存在になったようだ。

酸辣筆筒鱿魚/調理:山中一男(現代の名工の技)