PCゲームを含む、いわゆるテレビゲームが趣味として一般的に認知されるようになり、特に80年代以降のゲームは「レトロゲーム」という1ジャンルとして確立されている。そのレトロ枠には、単純にレトロゲームとしてくくれない作品が存在する。言うなれば「古典」に相当する作品だ。
『Ultima I: The First Age of Darkness』(Ultima1、ウルティマ1)は、いわゆるドラクエ的RPGの原点となる存在だ。
高校2年生の冬、同級生に譲ってもらったMSX2+に付いてきたゲームを遊んだことがある。現在のようにインターネットで情報が攻略情報が流通しているわけでもなく、マニュアルすらないのに、そこそこの段階までゲームを進めていたのだが、クリアしないまま現在に至っていた。
先日、ネットで作品を見かけて遊んでみたところ、数日でクリアしてしまった。『大戦略Ⅳ』*1でも感じたことだが、社会経験を通じて育まれたセンスが、自然に効率的なアプローチを見出してしまうのだった。
RPGの元祖
『ウルティマ1』が、いわゆる2Dマップ形式のRPG、その原点的存在であるのは、そこに施された仕掛けが、後の作品へ濃厚に引き継がれているからだ。RPGの世界観は、中世世界を模したファンタジー世界が一般的だが、なぜか宇宙や未来的要素が持ち込まれることがある。天空までそびえる塔が宇宙にまで達していたり、宇宙ステーションが登場したり、近未来兵器が登場したり...この元祖がここにある。例えば、
乗り物 | エアカー シャトル 宇宙船 タイムマシン |
武器 | ライト・セーバー、ピストル、フェザー、ブラスター |
防具 | 宇宙服、リフレクト・スーツ |
世界観 | 宇宙、宇宙海賊、過去から現代を操る |
また、元祖故に現在のジャンル分けにはそぐわない要素が多分に含まれている。例えば、
レベル | 経験値によって上昇するが、その他の要素に影響がない。 何の意味があるのか分からない。 |
種族 職業 |
基本的にボーナスポイントに差が出る 魔法の使用可否など、特性上の差異があるのだが、ゲーム終盤になるほど差は無くなる |
能力値 | レベルとは独立して上昇させる ミッション達成で上昇 イベントで上昇 |
ターン制 | 1操作(1コマンド)の単位が、ゲーム全体でカウントされる 2Dマップからダンジョンまで、一操作ごとに、モンスターも一動作する |
例えば、地上マップは2Dだが、ダンジョンは3Dだ。そしてユーザーが一操作するたびに、モンスターも一動作している。そのため、気づかない間に後ろを付けられていたり、一歩先の左壁にドアがある場所に踏み込めば、モンスターに先制攻撃されることもある。
そして宇宙に出かければ、疑似3Dシューティングだ。
効率的なアプローチ
能力値
高校時代のプレイに欠けていたのは、注意深さと合理性だった。各地に点在する王様が求める、いわゆる「おつかい」ミッションの目的地は、各地に点在するポストだ。このポストに到達すると、特定の能力値が上昇する。ポストから王城へ戻るとミッション達成となる。王城とポストを簡単にマッピングすると、次のようになる。
ウルティマ1の地上世界は、4つの領域で構成されており、それらは互い違いに入り組んでいるのだが...何のことはない、ただ隣同士を往復しさえすればよかったのだ。そして、能力値の上昇率は現在値の1/10だ。つまり、増えるほど(往復するほど)、値は複利的に増加する。最大値=99に到達するまでの往復回数も大したものではないのだ。
これに気付くと、レベル上げも戦闘も無意味なことが分かる。
HP
能力値同様、HPもレベルとは無関係に上昇する。このゲームでは、次のいずれかにおいて、HPが増量する。
- 王様から買う
- ダンジョンから生還する→獲得経験値、あるいは戦闘回数に応じて増量する
主戦場はダンジョン
加えて、特定モンスターの討伐をミッションとして課す王様がいる。HPの件と合わせて考えると、自ずと主戦場はダンジョンとなる仕掛けだ。ダンジョンに籠っていれば、簡単にお金が溜まっていく。そのお金で乗り物を調達するのだ。
イベント~シナリオ
このゲームにはシナリオが存在しないが、イベントを通じたフラグが存在している。クリアまでに、ある程度妥当な順位でクリアできるように仕掛けられている。具体的には、
- 四大モンスター討伐→四色の石獲得
- 宇宙船撃墜数=20→スペースエースの称号獲得
- プリンセス救助→タイムマシン獲得
- タイムマシン搭乗→ラスボス戦
🔎いわゆるネタバレ
高校生のときは、ほぼ勘とセンスに頼った試行錯誤で遊んでいたような気がするのだが、整理すれば、何のことはなかったのだ。数日でエンディングに到達してしまった。
余談
Final Fantasyへの影響
中世RPG世界にSF的要素を取り込むのは『ウルティマ1』が元祖とすれば、侍や忍者と言った東洋的要素を取り込むのは『ウィザードリィ』が元祖だろう。そして、この二つの影響をもろに受けているのが初代『Final Fantasy』と『Final Fantasy 3』だ。
初代ファミコン版に登場する浮遊城は、宇宙ステーションを思わせる存在だ。職業としての侍は登場しないのだが、日本刀をはじめとする、いわゆる和装備は侍を想起させるものだし、ジョブ・チェンジが初採用された三作目には、日本刀を装備可能な暗黒剣士(侍)と忍者が登場した。