Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

私の財産告白、人生計画の立て方、私の生活流儀ー本多清六

私の財産告白 (実業之日本社文庫)
本多清六は、実業家ではなく林学者だ。ドイツ留学した本多の恩師から次の忠告を得、貯蓄と投資で財を成した。

おまえはよく勉強するが、貧乏生活を続けてはならない。でなければ、金のために心にもない屈従を強いられるようになる。そうなれば学者の権威も何もあったものではない。

本多が実践した蓄財方法、思想から処世術までを網羅したのが、『私の財産告白』だ。

蓄財の基本を貯金とし、財産形成のために投資し、奉仕によって社会の寄託としての財産を放出するサイクルを、本多は訴えている。

本多の貯金生活

「天才マイナス努力」には、「凡才プラス努力」の方が必ず勝てる。

本多は「職業の道楽化」という仕事観を持っている。基本は勤倹貯蓄である。貧乏征伐と称する収入の1/4を貯蓄し、その残りで、一切の虚栄を配した生活を送る。本多は自身の貯金生活を、次のように表現している。

ジブンの値打ちが銀もしくは銅でしかないのに、暮らしの方は金にしたい。金メッキでもいいから金に見せかけたい。こういった虚栄心から多くの人が節倹できないのである。銀はどうせ銀、銀なりに暮らせばいいのであるが、さらに人生をより安全にし、生活をより健全にしようとするならば、むしろ一歩を退いて-事実は一歩を進めて-実力以下の銅なり、鉄なりの生活から出発していくべきだろうではないか。

本多式貯金法

  1. 本業に励む。一日一枚、出版レベルの原稿を書く。
  2. 給与の1/4と臨時収入のすべてを銀行に預ける
  3. ある程度のお金が貯まると、株式などに投資する。

「出版レベルの原稿を書く」というのは副業を指している。

特に贅沢品や嗜好品の購入について、その分を買ったつもりで貯金、あるいは投資する、「つもり貯金」も実践している。それらは素人の許にあるよりは、それにふさわしいところで管理されるのが良い、という考えに基づいている。しかし、本当に必要な時には買うことができるよう、それまでは資金を貯金、投資で担保しておくという発想だ。

本多式投資法

蓄財の基本は貯金にあるとはいえ、それだけでは財産として成長しない。そのため投資を実践することになる。本多の投資思想は、

  1. 基本は安全確実
  2. しかし、絶対安全はあまり期待できないため、比較的安全までを良しとする。
  3. 2割利食い、10割益半分手放し
  4. 好景気には勤倹貯蓄、不景気には投資。

原則として元値の2割の利益が出たら売却する。高騰が期待できるならば、2倍になったときに半分を売却し、残りは放置する。利益はすべて定期預金にする。

本多式奉仕法

本多の財産を、次のように4分割している。

  1. 生活費
  2. 四分の一貯金
  3. 交際修養
  4. 四分の一奉仕

財産は社会の寄託である、と本多は認識している。成功者は、さらに他人も成功させるために余力を割く必要がある、と考える本多は、社会的債務として収入の1/4を出資や寄付に充てている。これを四分の一奉仕として紹介している。

人生計画の立て方

本多清六は、自らの考えを本書を含む三部作として残している。残りの2冊は人生の計画、生活についてだ。
本多は人生を4つの期間に分類している。

教練期 6-20歳 人間らしく働くための準備。勉学、練成、克乏生活の訓練。
勤労期 21-65歳 身のため、国のために働き、名利を蓄積する。職業の道楽化。
奉仕期 66-85歳 名利を超越して世のため、人のために働く。名誉職、世話役、人生指導。
楽老期 86歳- 働学併進、努力道楽の晩年。晴耕雨読

この分類に基づき、本多は次の計画を立てた。本多自身の人生計画要項である。

  • 40歳までは奮闘努力、勤倹貯蓄で一身一家独立安定の基礎を築く。
  • 60歳までは専門職務を通じて、学問、国家社会のために働く。
  • 70歳までは名利を超越し、世恩に報いるためのお礼奉公に努める。
  • 70歳以上から晴耕雨読の晩年。
  • 広く万巻の書を読み、遠く万里の道を往く。

いわゆるearly retirementを本多は考えていないし、いわゆる「老後」は65歳以降でもない。初老を通り越すまでは勤労が人生の中心である。おそらく「職業の道楽化」が反映された結果なのだろう。

私の生活流儀

最後に本多は、日々の生活についてまとめている。ここでは合理的生活、利殖などお金にまつわる話題から健康法、人生のイベントとしての結婚と住宅の話題等が取り上げられている。

一点、感心したのが嫁入り道具と貯金通帳の話題だ。娘が嫁入りする際に、本多は一切の嫁入り道具を贈らなかった。その代わり、必要なものを書き出させて、それが買えるだけの金額を入金した口座通帳を引き渡した。これは次の考えを反映した行動だ。

  • 本当に必要なときにお金を引き出して購入する。
  • 最も必要なときに、必要なものを「新品で」利用する

いわゆる冠婚葬祭を本多は無駄である、と考えている節がある。代わりに提案しているのが「てんぷらの会」だ。何かの折につけ、本多はてんぷらをご馳走する会を催していたらしい。そして、先の冠婚葬祭のような発表事も、その折に済ませてしまう。自分だけでなく、招待客にも社会的流儀にまつわるコストを負わせることなく省いてしまう方法だ。