今時のLinuxデスクトップ環境と言えばGNOMEだろうが、90年代からゼロ年代はMotif、CDEだった。Sun Microsystems時代のSolarisも搭載していた。
反フラット・デザインで、あえてCDEをインストールしようというユーザーがどれだけいるだろうか。端的に古いだけでなく、導入のための情報も少なく、選択肢になりえないのが実際のところだと思う。
NsCDE (Not so Common Desktop Environment)の見た目はCDEでありながら、実際にはヘビー級のFVWM拡張テーマ、とでも呼ぶべき存在だ。「羊の皮をかぶった××」という表現に倣えば、CDEの皮をかぶったモダン・デスクトップ環境、と言えば通じるだろうか。
その見た目、挙動はYouTubeにアップロードされた一連のデモ動画で確認することができる(投稿末尾参照)。
この投稿では、NsCDEのインストール手順を紹介する。紹介する手順は、素のUbuntuでも、Hyper-Vでも、そしてWSLでも、ほぼ共通に適用できる。特にWSLに対するポイントを、必要に応じて書き添えている。
前提
この投稿では、次の環境を前提としている。
- Ubuntu 20.04.2 LTS
- NsCDE 2.0
WSLの場合、次の段階まで整っている環境で作業することを想定している。
必要に応じて、次の投稿を参照してほしい。
インストール
github.com
基本的には、GitHubに掲載されているインストール手順通りに作業する。Ubuntuへのインストールを前提にすると、大まかな手順は次のようになる。
- 「Known system specific package dependencies」に記載されたパッケージのインストール
- 追加パッケージのインストール
- 「Installation」に記載されたダウンロードとインストール
- 再起動、初期設定(WSLの場合は不要)
まずは、どの環境でも共通の手順として、次のコマンドを実行する。
sudo apt update -y sudo apt upgrade -y
依存パッケージのインストール
「Known system specific package dependencies」に指定されているパッケージは多い。そして「Installation Dependencies」に記載されているパッケージを網羅していない。
さらに使用環境次第では、記載されていないパッケージを追加インストールしなければならない。私は次のパッケージもインストールした。
ちなみに「WSL」の欄に”x”が付いているパッケージは、WSLの場合にインストールする必要がある。
🔎追加パッケージ
パッケージ名 | WSL | |
---|---|---|
dunst | 「Installation Dependencies」で指定されている | |
gcc | コンパイルに必要 | x |
firefox | NsCDEのヘルプ参照に必要 | x |
gettext | msgfmtのために必要 | |
ksh93 | 「Installation Dependencies」で指定されている | |
libx11-dev | cursorfont.hのために必要 | |
libxext-dev | shape.hのために必要 | |
libxpm-dev | xpm.hのために必要 | |
make | WSLの場合、コンパイルに必要 | x |
python3-psutil | "./configure"の実行結果の指摘から |
まずはインストール済みのパッケージを確認し、不足パッケージを特定したうえで、それらだけをインストールするコマンドを実行するのが良いだろう。
次のコマンドは、インストール済みパッケージの特定に利用したコマンドだ。”apt list”を”sudo apt install -y”に書き換えれば、インストール・コマンドとしても機能する。
apt list gcc make ksh ksh93 xterm xdotool xscreensaver xsettingsd xclip xutils x11-utils x11-xserver-utils python3 python3-xdg python3-yaml python3-pyqt5 python3-psutil qt5ct qt5-style-plugins fvwm fvwm-icons dunst gettext imagemagick stalonetray gkrellm rofi libx11-dev libxext-dev libxpm-dev libstroke0 libfile-mimeinfo-perl firefox xfe rox-filer
インストール作業の最終段階で、希望するファイル・マネジャー、テキスト・エディタのコマンドを選択することができる。
実際のところ、これに正しく対応したからと言って、適切に設定反映してくれるわけではないのだが、ひとまず付き合っておくことにする。前述の”apt list”コマンドの末尾に記載されている「xfe」(xfwriteが収録されている)、「rox-filer」は、この対応のための施策だ。ユーザーの好みに応じて書き換えればよいし、不要と思えば削除して構わない。
NsCDEのダウンロードとインストール
「Installation」の指示通りに作業するのだが、私のUbuntuにはコマンド"umask"がインストールされていないため、該当箇所のコマンドは実行していない。コマンド"wget"でダウンロードする前提では、一連のコマンド実行は次のようになるだろう。
ちなみに、GitHub中で指定されている「<version>」を、「2.0」へ置換していることに注意。
cd /tmp wget https://github.com/NsCDE/NsCDE/archive/2.0.tar.gz tar xpzf 2.0.tar.gz cd NsCDE-2.0 ./configure sudo make sudo make install
"./configure"の実行結果には一通り目を通しておいた方が良い。前述の追加パッケージは、その指摘に基づいてインストールした。特に"No"と指摘されている項目について、パッケージ導入で解決できるものであれば、"sudo make"を実行前に対応しておくと良い。
再起動、初期設定
WSLの場合
🔎必要に応じて展開
WSLの場合、再起動は不要だ。
まずX serverが起動していることを確認しておくこと。起動していたら、次のコマンドを実行する。
nscde -r
コンソールで次の進捗が表示される辺りで、
X serverの画面が表示される。
そして初期設定へ。
WSL以外の場合
「NsCDE」を選択してログインすると、splash windowが表示された後、初期設定の確認が繰り返される。
初期設定
ここからはNsCDE上のTerminalで作業する。初期設定の確認事項に、Y/Nでの回答を繰り返していく。分からなければ、全て”Y”で構わない。
初期設定の最後2つは、前述したファイル・マネジャー、テキスト・エディタのコマンドを入力する必要がある。分からなければEnterキーを押すだけで良い。
一連の確認を終えたら、インストール完了だ。この投稿冒頭の画面が表示される。