EvernoteからOneNote*1へ移行して1年が経過した。OneNoteは、私が必要としている機能をすべて備えているが、自由過ぎるが故の不都合、とでも表現すべき短所がある。具体的には、
- タグの概念がないツリー構造
- ページの概念がない自由領域
- 手入力ではなく、GUI操作の数式入力
無料で使用でき、これらの不便を解決できそうな次のMarkdownノートを比較してみることにした。
私が求める要件は、次の三機能だ。これらに加えて、何が有償なのかを比較対象項目としている。
- OS、端末を問わずデータ共有、あるいは同期可能
- 数式入力可能
- タグ付け可能
ちなみに、Markdown入力は「当たり前」の機能として要件には含めていない。
注意:データ共有と同期
使用するノート、メモ系のアプリケーションは、OS、端末形態を問わずサポートしてほしい。そこで避けられないのがデータ共有、あるいは同期だ。
多くの場合には「同期」と一言で済ませられるところだが、その実態はクラウドに保存したデータの共有を指している場合もある。これは、実際には同期ではなく、データ共有と表現すべきところだろう。この投稿では同期とデータ共有を、以下のように明確に区別している。
同期 | データを端末内に保存している それぞれの端末内のデータの内容が整合する |
データ共有 | データをクラウドに保存している それぞれの端末から、同じデータを参照する |
それはアプリケーションの思想、特性を反映している。例えばOneNoteは、基本的にデータをOneDriveに保存する。OneNoteが動作する端末はOneNote上のデータを参照する。ローカル環境にも保存できるが、そのデータを他の端末から参照することはできない。つまりOneNoteはデータ共有型のアプリケーションだ。
またObsidianは同期型だ。Obsidianは、それが動作する端末上にデータを保存する。FolderSync*5のような支援アプリやGitHub*6を活用することで、それぞれのデータを同期する。
比較、まとめ
何も文句がないのはJoplinだ。必要な要件をすべて満たしている。
データ共有のための有償サービスが用意されているが、ユーザー自身の使いたいオンライン・ストレージを設定することで、無料でもデータ共有に対応している。
次点はObsidianだ。データはローカル環境に保存する前提で、ユーザー自身が使いたいオンライン・ストレージを設定することができない。データ同期機能は有償サービスだが、プラグインを導入することで、無償でもデータ同期に対応することができる。
しかし、この運用は面倒だ。GitHubはモバイル対応できず、FolderSyncはAndroid以外に対応できないなど、運用を共通化できる同期手段がない。
機能 | OneNote | Joplin | Obsidian | Simplenote |
---|---|---|---|---|
データの実態 | フォルダ oneファイル |
sqlite | フォルダ mdファイル |
|
データの同期、共有 | 共有 | 共有 | 同期 共有 |
共有 |
数式の入力 | 数式エディタ | TeX記法 MathJax |
TeX記法 KaTeX*7 |
|
タグ | OK | OK | ||
特記事項 | 自由過ぎるのが不自由 | オープンソース版Evernote | 何かと特殊 | アカウント登録制 |
Joplin
Joplinは、例えるならばオープンソース版Evernoteだ。Evernoteからのデータ・インポートにも対応している。
アプリケーション上のデータ構造はOneNoteと同じだが、呼び名が異なっている。
OneNote | Joplin |
---|---|
ノートブック | Notebook |
セクション | Sub-notebook |
ページ | Note |
Tag |
しかしファイル・システム上のデータ構造は異なっている。Joplin内のすべてのデータが、単一のsqliteファイルに保存される。この保存場所を任意のクラウドサービスに設定することで、データ共有を実現できる。
NotebookやNoteを個別のファイルとして取り出す場合には、Exportで対応する。
OneNote同様、webクリップ用のブラウザ拡張も用意されている。
Obsidian
ObsidianはOneNote、Joplinとの類似点がありながら、形態も印象も異なるソフトウェアだ。
アプリケーション上のデータ構造はOneNoteと同じだが、呼び名が異なっている。例えば、ObsidianではノートブックのことをVaultと呼ぶ。
ファイル・システム上のデータ構造も似ているのだが、若干の違いがある。OneNoteはセクションをファイル単位としているのに対して、Obsidianはページをファイル単位にしている。
OneNote | Obsidian | ||
---|---|---|---|
ノートブック | フォルダ | Vault | フォルダ |
セクション | oneファイル | Folder | フォルダ |
ページ | oneファイル内のデータ | Note | mdファイル |
VaultをOneDriveの様なクラウドに保存することも可能だが、モバイル用Obsidianは、それらを直接参照することができない。フォルダをVaultとして参照するオプションは提供されるものの、そこにクラウドは含まれないのだ。
またOneNoteは単一画面に複数のノートブックを表示するのに対して、ObsidianはVault毎に画面表示する。
Obsidianはローカル環境へのデータ保存を前提としており、データ共有を有償サービスとして提供している。
ユーザー主導でデータ同期を実現する一案は、VaultをGitHubリポジトリにする方法だ。しかし、モバイル対応できない。
Vaultをクラウド上に配置し、端末上のフォルダとFolderSync等で同期させれば、Obsidianは端末上のVaultを参照できる。編集後に再同期すれば、クラウド上のVaultを更新できる。
問題なのは、データ同期のトラブルを避けるため、運用上の配慮が避けられないことだ。他の端末と同時にフォルダを参照し、更新してしまうリスクを避けられない。
simplenote
Simplenoteは他のサービスに比べて分が悪い。どの機能においても、Joplin、Obsidianに勝るところが何もない。特徴的な事柄の箇条書きにとどめておく。
- アカウント登録必須
- データ共有必須
- JSON、mdファイルでのエクスポート可
- 数式入力不可