Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

機動戦士ガンダム MSイグルー -黙示録0079-

機動戦士ガンダム MSイグルー 黙示録0079 (角川スニーカー文庫)
これは2006年に、旧ブログへ投稿したものです。加筆、修正の上、こちらへ移行しました。

先日紹介した『機動戦士ガンダム MSイグルー1年戦争秘録-』*1の続編だ。引き続き、第二次大戦にインスパイアされたような事柄が散見される。
今回のシリーズでは、1年戦争後半の敗色濃厚な状況からのスタートだ。このような時、早々に状況を収束させる手立てがあればともかく、そのような選択のない状況では、一発逆転を狙うのが定石になるのだろう。あるいは、そうする以外の手立てがない状況なのかもしれない。

ナチス・ドイツが開発した世界最初のジェット戦闘機、メッサーシュミット Me262を見たアドルフ・ヒトラーは、これで爆撃機を作るよう命じた、というエピソードを聞いたことがある。兵器の特性を考慮しない、思いつき同然の指示なのだが、作中に登場する評価兵器にも似たような境遇を感じるのだ。

一発逆転を狙うからには、普通のことをやっていたのではダメ、ということの発露なのだろうか。あるいは、どうせ負けるのだから、最後に甲子園の土だけでも踏ませてやろう、的な実戦投入かもしれない。追い詰められた状況での無茶苦茶さ加減が伝わる展開だ。


例えば、第1話に登場するゼーゴックだ。本体に水陸両用モビルスーツズゴックの本体を転用している。そもそも水中仕様なので、宇宙仕様にも転用できる気密性が確保されているのかもしれない、そのように発想できるほどガンダムに知見のある視聴者には、「リアル」要素が感じられる演出なのかもしれないが、実際には慎ましい機材状況を表現するための演出だろう。
日夜、地球連邦軍は本拠地であるジャブローから戦艦を打ち上げている。ゼーゴックは大型武装ユニットを搭載し、大気圏外から突入して、打ち上げられる戦艦を迎撃する。迎撃後は現地回収される手筈だ。「リアルロボット」とはいえ、この運用はかなり非現実的だ。

  • 敵艦打ち上げ情報の事前把握
  • 大気圏突入、迎撃、現地回収プラン
  • 現地回収部隊の派遣

敗色濃厚な追い詰められた状況にもかかわらず、この兵器の運用においては、これらの段取りを整えておく必要がある。兵器のコンセプト以上に、その無茶を通して作戦実行してしまうことが、すでに追い詰められている状況の現れなのかもしれない。

第3話は、冒頭のヒトラーメッサーシュミットのエピソードに通じるデタラメさを感じさせるエピソードだ。登場するのは、1年戦争当時の最速モビルアーマー、ビグロの転用兵器だ。最速のビグロを、小型兵器の補給、修理が可能な拠点兵器に転用してしまう。兵器の特性を台無しにする応用なのだ。
どうやら作品制作者達は、この応用を意図的に狙って演出しているようだ。わざわざ技術者である主人公に、その事実について作中で突っ込みを入れさせるほどなのだ。そこまで無茶な転用をして急造した兵器なのだ、ということを強調したかったのだろう。

加えて、多少ガンダムに知見のある者から、さらに邪推を誘うような演出がある。

  • ビグロは赤く塗装されている
  • 追加ユニットに脚のようなものがある(実際は脚ではないが、そのような形状をしている)

赤色の機体と言えば、あの人物が登場するのが恒例だ。もし素性の知れない新機軸の技術が搭載された新兵器、ジオングではなく、枯れた従来技術の延長上にあるビグロを選んでいた可能性を邪推してしまう。
最終決戦の一番大事な戦いで登場する機体だ。保守的に考えればビグロだろう。ジオンのエンジニアは、気を利かせてビグロを赤く塗装しておいたのではないか。そうなればジオングは後回しだ。ジオングは火力もあり、遠隔攻撃も可能なので、拠点兵器に転用しても無駄、非効率は「限定的」だ。場合によっては、ビグロではなくジオング+補給、修理ユニットでの実践投入が考慮されていたのではないか。
しかし、あの人物はジオングを選んだのだ。余ったビグロを、こちらへ転用することになる。

私の勝手な思いつきなのだが、補給、修理ユニットに据え付けられたジオングのイメージは、何となく様になっている印象だ。

ともあれ前シリーズ同様、内容は薄く、やはりCGによる戦闘シーンをリアル描写したかっただけなのではないか、そのための理由付けに30分足らずのストーリーに仕立て上げた、という印象は変わらない。