Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

イノセンス - INNOCENCE

これは2005年に以前のブログへ投稿したエントリーに加筆、修正したものです。

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』の続編。前作が好評だったからか、かなり押井守監督の色が濃厚な仕上がり。CGを多用した映像表現はすばらしいが、脚本、特に登場人物たちの掛け合いが謎かけのようで、大したことの無いストーリを難解なものに感じさせている。そのストーリーは原作の一エピソード「ROBOT RONDO」をアレンジしたもので、映画化に当たってその大筋には変化は無い。

ストーリーのヤマとなる舞台は択捉。原作の一エピソード「PHUNTOM FUND」の舞台となった択捉は、旧型の電脳都市として秋葉原的な雑踏と共に表現されていたが、劇中ではまったく無国籍な未来都市として描かれている。エスニックな雰囲気のねぶた祭りを思わせる巨大な山車が闊歩する街。原作の面影はまったく無い。

対比として面白いのが、イノセンスとは異なる、パラレル・ワールド的なもう一つの攻殻機動隊である『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 10』。

ストーリーは全く異なるものの、舞台は同じく択捉である。ここで描かれる択捉のディテールは原作を尊重したものとなっているのが興味深い。
かたやストーリーだけ拝借した、原作とは全く別物の攻殻機動隊。かたやストーリーは全く関係無し、舞台のディテールのみを拝借した攻殻機動隊。個人的に想像する攻殻機動隊的な雰囲気は、後者からより強く感じられる。

この違いは、私自身に次のような印象をもたらした。
前者の作り手は、実際のところ攻殻機動隊のことはどうでもよく、自分自身の表現を追及するための題材として攻殻機動隊を借りている。一方、後者の作り手は攻殻機動隊が好きで、自分なりの攻殻機動隊を表現した結果、原作の雰囲気を尊重したオリジナルの攻殻機動隊を作り上げた。

そのようなディテール、ストーリーも、実は映画としての体裁を整える飾りでしかなく、前作でAIと融合し、自分自身(Ghost)をネット上に置いた草薙素子とバトーの恋愛、端的には、実体は無いけど「確かに」存在している者と、実体はあるけれどもそれは作り物である者との恋愛模様が描かれている。
とはいえ、何もかもがすべて謎かけのようで、ストレートに訴えてくる表現は皆無であることから、理解に苦しむ。結論として、映像表現としてのCGだけが印象に残り、この映画は何だったのか、と言う本質的なメッセージは雲散霧消する。

登場人物の現実感を操作し、現実と仮想現実のループを生じさせるトラップが、お約束的に登場する。
どこからが現実で、どこからが仮想なのか、を考えながら鑑賞するのはゲームのようで、個人的には好みだが、端的にストーリーやメッセージを追いたい視聴者には鬱陶しい仕掛けだろう。

鑑賞前の心得

攻殻機動隊には、一般人には馴染みの無い独特の表現、用語が多数登場します。DVDでは本編の前に、事前知識を分かりやすく解説してくれるパートが挿入されています。ジブリなりの配慮だと思うのですが、バンダイ、ディズニーが扱うBlu-Rayにも収録されているか、気がかりです。

居眠りポイント

ストーリに興味を感じず、さらにCGにも夢中になれない人は確実に寝ると思います。そういう意味では、映画全体が居眠りポイントです。

一言ストーリー

端的にストーリだけを把握するのであれば、原作に収録されている「ROBOT RONDO」を一読されることをお勧めします。きっと映画よりも、原作のほうが面白いです。