iPadでキーボードを使いたければ、Bluetoothキーボードを使えばよい、と考えていた。しかしノートPCとは異なり、Bluetoothキーボードにポインティング・デバイスが付属したものは、選択肢が限られている。
このような要素を満たす製品を探すと、自ずとiPad Magic Keyboard*1に辿り着く。対抗の3rdパーティ製品は、logicoolのFolio Touch*2だった。Magic Keyboardとの価格差を考慮したとき、Folio Touchこそが本命に思えたものだった。そして、その新製品であるCombo Touch*3が登場した。
Folio Touchとの大きな違いは、Microsoft Surfaceのようにキーボードが着脱可能になったことだ。順当に考えれば、FolioからComboへ乗り換えても問題なさそうなところだが、実際のところキーボードにこだわりのあるユーザー程、無視できない違いがあるのだった。
個人的な結論としては、価格差、そしてキー配列において、やはりFolio Touchが本命だった。
違いが気になるユーザーのために、Folio Touch、iPad Magic Keybordとの違いをまとめておいた。なお、申し添えておくと、ここでの情報はiPad Pro 11インチを前提にしている。
Combo Touch
比較の前に、Combo Touchについて軽く触れておく。Combo TouchはiPad用の保護ケース付きキーボードだ。iPad本体をケースにはめ込んで、装着する。
キーボードは着脱可能で、Microsoft SurfaceのようにiPadを運用することができる。着脱可能とはいえ、キーボード自体にバッテリは搭載されておらず、電源はSmart Connectorを介して、iPadから供給される。そのため、キーボードを分離した状態で、Bluetoothキーボードのように運用することはできない。
Folio Touch vs. Combo Touch
両製品の違いは
Folio | Combo | |
着脱可能キーボード | × | 〇 |
キー配列 | 英語 | 日本語 |
タッチパッドの広さ | Folioより横幅が2cm広い | |
重量 | Folioより68.5g軽い |
両製品の価格差に対して、この違いにどのように価値を見出すか、が判断材料となるだろう。
2021年6月23日時点、ligicool、Amazonでの販売価格だ。Combo、Folio間で価格の逆転現象が起きている。本来、新製品であるComboの方が高額なのだが、AmazonではFolioの方が高額だ。
logicool | Amazon | |
Folio Touch | 19580円 | 24300円 |
Combo Touch | 22770円 | 20700円 |
この価格差として考えられる可能性は2つある。一つ目は、Folioは現在の流通分で完売する可能性があることだ。実際、iPad Pro版について、logicoolサイトには「一時的に完売です」と記載されている。
二つ目は、Folioには、特定ユーザーにアピールする、Comboに勝る特徴があるのかもしれない、、ということだ。仮に存在するとすれば、それはキー配列だろう。単純に英語、日本語の配列の違い以上の差異があるのだ。次の写真を比較参照すれば、それは一目瞭然だろう。
🔎Folio Touchのキー配列
🔎Combo Touchのキー配列
具体的に言及すれば、日本語配列になった結果、Comboではキーボード右側のキーが縦長となり、配置が変則的になっているのだ。特にエンターキー周辺の配置から、歪な印象が伝わるだろう。
そしてなぜか、コントロール・キーが「A」キーの左側に配置されるという、UNIXマニアは喜ぶかもしれないが、iPadでの実用において、何も益をもたらすことはないアレンジも確認できる。
日英配列変更の差異は置いても、率直に言えば、キーのサイズ、配置が変則的であり、たとえそれが実用的な利便を損なわなかったとしても、特定ユーザーは、キーボード着脱がもたらす利便性を上回る、ネガティブ要素と捉えることだろう。
そのネガティブ要素が、特定ユーザーをComboよりもFolioに走らせ、結果として価格差に反映されているのかもしれない。
iPad Magic Keyboard vs. Combo Touch
Folio Touchと同じく、特徴の違いによって生じる価値を、価格差で判断するのが妥当だろう。両製品の特徴的な違いは、
Magic | Combo | |
着脱可能キーボード | × | 〇 |
iPad本体ケース | × | 〇 |
チルト機構 | カンチ・レバー | キック・スタンド |
Type-C端子 | 〇 | × |
キー配列 | 選択可 | 日本語 |
Functionキー | × | 〇 |
2021年6月23日時点、Apple、ligicool、Amazonでの販売価格だ。両製品には、12000~15000円の価格差がある。この価格差で、前述の差異に納得できるかが選択のポイントになるだろう。
Apple logicool |
Amazon | |
iPad Magic Keyboard | 34980円 | 34980円 |
Combo Touch | 22770円 | 20700円 |
Magic、Combo共に、iPad本体とキーボードを容易に着脱できる。違いは、ComboではiPad本体がケースで保護されているのに対して、Magicは本体が裸の状態であることだ。
iPad Pro本体側面にはスピーカー、マイクが配置されている。Magicは本体背面以外を塞ぐことはないのだが、Comboのケースは本体前面以外を塞ぐ。実用上の支障があるわけではないのだが、神経質なユーザーは意識する違いかもしれない。
Comboのチルト機構は、ケース背面のキック・スタンドに依存している。そのため、キック・スタンド分だけ、Comboはより広い設置面積を要求する。キック・スタンドの性質上、瞬時の角度調整も苦手だ。
Magic、Comboともに、Smart Connectorを介して、iPad本体からキーボードへ電力供給される。キーボード接続状態で、iPadを充電しながら使用する場合、ComboではType-C端子を利用することができなくなる。
Magicは、Type-C端子をキーボード側にも備えているため、キーボード側からのパス・スルー充電に対応できるし、iPad側のType-C端子を外部機器との接続に用いることができる。
そして問題のキー配列だ。Magicは英語配列を選択することができる。一方、MagicにはFunctionキーが存在しない。例えば、画面輝度や音声ボリュームを調整する場合、Magicでは、iPad本体画面で操作する必要がある。Comboはキーボードで対応可能だ。
これはAppleとlogicoolの、設計思想の違いが反映されているのだろう。極端に言えば、キーボードだけで操作を完結できるのがCombo、キーボードは情報入力だけを担い、本体操作はあくまでもiPadで操作させるのがMagic、という意識、思想の違いを感じさせられた。