Technically Impossible

Lets look at the weak link in your statement. Anything "Technically Impossible" basically means we haven't figured out how yet.

PMBOK GUIDE第7版に至る変化

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昨年10月にPMBOK (Project Management Body Of Knowledge) GUIDE第7版がリリースされた。大きく話題になったことと言えば、次の2点だった。

  • アジャイル+結果重視への変化
  • 冊子のページ数大幅削減

それだけを取り上げて変化とするのは、決定的に本質を見落としているような気がしていた。どちらの変化も事実ではあるのだが、実態を正確に反映しているわけではない。

ウォーターフォールを捨ててアジャイルに転向したわけでもないし、事業目標に整合した価値創出、結果重視などは当然のことで、PMBOKに言われるまでもなく、その他団体の各種資格でも常套句だ。それは今更の話題であり、何も驚きを伴うことではない。
内容を大幅に削減して、知識体系を大きく縮小したわけでもない。

この投稿では、次の話題を取り上げる。

  • 第7版が登場した背景
  • 冊子のページ数が削減された理由

この投稿に目を通したからと言って、第7版の理解が深まるわけではないのだが、第7版が求めている現代的プロジェクトマネジメントの気風、心意気のようなものは感じ取れるかもしれない。

念のために前置き

プロジェクトと言えばシステム開発など、ITに関連するプロジェクトと暗黙に直結させる人たちがいる。プロジェクトとはITに関連する活動に限らず、例えば、

  • 土木開発、建築
  • 新薬開発
  • 映画撮影
  • 研究
  • 軍事

などなど、対象となる活動は多岐に渡っている。PMBOKでのプロジェクトとは、特定分野に対象を限定しない、あらゆるプロジェクトを包含している。

さらに言うと、PMP (Project Management Professional)とは、ITプロジェクトの専門家認定ではなく、専門職としてのプロジェクト・マネジャーとしての専門性を認定する資格であり、業種も対象も限定されていない。

PMBOK GUIDE第7版のポイント

PMBOK GUIDE 原則論
principle statement
書籍
PMIstandards+ 方法論
HOW TO, practice
Web

成果物よりも結果を重視

focus on outcomes rather than deliverables

プロセス・ベースを否定し、原理原則ベースへの移行を促しているわけではない。
プロジェクト形態、業種に応じて、最良の手法を適用する。

初版からの変遷

そもそもPMBOKは、様々なプロジェクトにおいて実践されていたことを知識として体系化したものだった。そのサブセットとして出版されたのがPMBOK GUIDEだ。その姿勢、アプローチは次のように変化し、第7版に至っている。

Edition 特徴 アプローチ 主眼
初版 知識体系のサブセット プロセスに基づく ステークホルダーの要求、期待を満たす、越えること
第3版 ANSI標準
プロジェクトマネジメント標準
ベスト・プラクティスに基づく プロジェクト要件を満たすこと
第6版 ANSIとガイドの分離 アジャイル
変化に適応
第7版 原理原則に基づく 成果物よりも結果を重視

第7版に至るまでの変遷を単純に捉えれば、定められた責任を果たすことから、とにかく結果を出すこと、に方針が変化したと解釈できる。加えて多様なアプローチを許容する前提での、原理原則主義だ。
プロジェクトを取り巻く変化が激しい環境では、その変化に適応することが求められるため、プロジェクトの方法論、実践形態も変化する。プロジェクトごとに異なるアプローチを許容するが、全てに通底する原理原則を違えてはいけない、ということだ。

もう一つの解釈

プロジェクト手法として典型的なのは、ウォータフォール(計画駆動)とアジャイルだが、ウォーターフォールの対抗となる手法は他にも存在するし、アジャイル手法も細分化されている。

スパイラル 反復型
スクラム マネジメント・プロセス
アジャイル AUP (Agile Unified Process)
SAFe (Scaling Agile Framework)
DA (Disciplined Agile)

実施するプロジェクトにとって最良の手法を選択する前提では、プロジェクトの実施方法は多岐に渡る。しかし知識体系としては、成功するプロジェクト運営の「共通点」を見出す必要がある。

それぞれのプロジェクト手法について網羅した知識体系ではなく、全てに通底する事柄を見出すとなれば、それは「原理原則」ということになる。

第6版から第7版の変化~PMIstandards+の存在

冒頭に掲載した図が、変化の概要を一目瞭然に表している。次のことが分かる。

  1. 第7版は、第6版の構成を踏襲しているが、内容が大きく変化している。
  2. PMIstandards+の存在。

原理原則にまつわる事柄を抽出し、再構成したのがPMBOK GUIDE第7版だ。それは次のように構成されている。いずれも原則論だ。

The Standard for Project Management A SYSTEM FOR VALUE DELIVERY
PROJECT MANAGEMENT PRINCIPLES
A Guide to PMBOK TAILORING
MODELS, METHODS, AND ARTIFACTS

従来、PMBOK GUIDEは原理原則に加えて、実践方法にまつわる知識も網羅していた。それがPMIstandards+として独立し、オンライン・コンテンツとして提供されている。

PMBOK GUIDE principle statement 原理原則
PMIstandards+ HOW TO 実践方法

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そもそもプロジェクトとは、異なる業種で実施されている活動であり、プロジェクトの実施形態から環境によって、実践方法も中間生成物も異なる。従って、誰もが共通の情報を必要としているわけではなく、それが誰もに対して有用なわけでもない。
加えて、昨今のプロジェクトを取り巻く環境の変化によって、方法論も生成物もさらに変化する。つまり実践方法の情報を提供するには、追加、更新が避けられない。
それらに対応するため、方法論はPMIstandards+として独立している。

第7版としてページ数が大幅に削減されたのは事実なのだが、だからと言って関連する情報が大幅に削減されたわけではないのだ。