Technically Impossible

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ツインピークス The Return - 私なりの一解釈

ツイン・ピークス:リミテッド・イベント・シリーズ DVD-BOX
やっと『ツインピークス The Return』(以下、新作)を一通り観ることができた。例によってリンチ流の視聴者を置いてけぼりにするような、さらなる続編展開を待望させる結末だった。
鑑賞前の楽しみは、クーパー捜査官の復活と、その分身との対決であったものの、新作では『ツインピークス』世界の根幹に関わる大きな謎が提示され、鑑賞前の楽しみは、相対的に小さなものになってしまった。実際、旧作のクーパー捜査官、その当時を思い起こす振る舞いと活躍は、物語終盤のごく一部に限定されている。

前作と今作の一番大きな違いは、前作が
ツインピークス1か所でのストーリー
・ストーリーは時系列に進む

であるのに対して、新作では
ツインピークスワシントン州にある設定)、サウス・ダコタ、ラスベガスで展開されるストーリー
・舞台に寄らず、必ずしも同時進行ではない、時系列に沿ってもいない

ということ。

一通り観ていて、ある場面で次のことに気が付いた。新作は

  • エヴァンゲリオン』のような繰り返すごとに差異の生じる、時間的なループ構造
  • シュタインズゲート』のように、ループ中の差異をコラージュしていること
  • ループのすべては提示されず、その一部が断片として提示されていること

これから紹介するのは、初回鑑賞後の私なりの解釈。

前提となる世界観

ツインピークス』世界は、誰かが見ている夢の世界。異世界の人物を除いて、劇中の人物全ては夢の中で人生を過ごしている。
おそらく、この「誰か」はジュディ、8話で登場した女性とは限らないのだが、虫を飲み込んで寝込んでいる「誰か」が観ている夢。
そもそも劇中のほぼ全ての出来事が夢の中なので、不条理かつ不可解なことが当たり前に発生する。

夢は多層構造になっており、「誰か」が見ている夢の中(『ツインピークス』世界)で、登場人物達も夢を見る。特に新作劇中で明確なのが、オードリー・ホーンの登場場面。16話の最後でオードリーは目覚めた。あるいは結果的にチャーリーによって目覚めさせられた。

ループであり、コラージュである根拠

私が気づいたのが第13話、次の場面での、ボビーの発言「今日、父の遺品を見つけたんだ」

found some stuff that my dad left today

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この遺品を見つけたエピソードは11話に登場する。このエピソードには次のシーンが含まれている。
遺品発見後、ボビーはダイナーを訪れ、シェリーとともに、ベッキーの今後について相談に乗る。その場で発砲事件が発生し、成り行きからクラクションを鳴らす女性の車を調べると、ゾンビのような同乗者を見つける

このエピソードは13話で、問題の場面にすり替えられてしまった。13話では、該当場面は次のようなシーンになっている。
ベッキーシェリーへ相談の電話をする。シェリーは一緒にパイを食べようと提案する。ボビーがダイナーを訪れると、シェリーはすでに帰宅しており不在。エド、ノーマの座席へ誘われる。この座席での会話の一部が、先の問題の場面。

おそらく、このようなエピソードが他にも、ふんだんに盛り込まれているのではないかと思う。私はまだ気づいていないのだが、怪しいと思うのが次の場面。
・ジャコビー先生のYouTube放送場面
・FBI+ダイアンの登場場面
・ダイアンとクーパー分身とのメッセージ交換場面(舞台の時差を考慮した送受信時刻を確認すべきだった!)

また製作上の都合で生じたものとはいえ、旧作パイロット版、インターナショナル版、旧作の差異も、このループの一環ということにしてしまう意図なのかもしれない。それらを破綻なく吸収する工夫なのだとも感じた。

登場人物の一部は、他のループの出来事をおぼろげに覚えている、あるいは気付いている。

クーパー捜査官は時間を超越している異世界や自身の夢を通じて、いくつかの場面を見ている。例えば最終話、ボブとの対決後の画面に、クーパー捜査官の顔がオーバーラップし続ける。きっと、この場面を劇中に登場しないどこかで見かけており、だからフレディの存在に気づくこともできた。

同じく最終話。クーパー分身の保安官事務所訪問時、アンディーは、次にかかってくる電話が大事であることをルーシーに伝える。

シュタインズゲート』の主人公は、過去に戻ることを繰り返しながらも、そこから分岐する、それぞれの世界の記憶を保持している。『シュタインズゲート』では、この分岐をエピソードごとに整理して視聴者の理解しやすいように提示している。
一方、新作では、それらをコラージュしてしまうことによって、視聴者に混乱、誤解、不思議や不条理、違和感の演出として提示しているように見える。

オードリーの夢とチャーリー

オードリーとチャーリーは12話から登場する。チャーリーは何かの締め切りに追われている。そのチャーリーへ、オードリーはビリーが好き、ティナを探さないと、とチャーリーを追い立てる。

これは根拠のない私なりの推測を交えた解釈。チャーリーは夢のシナリオ・ライターで、その夢が誰のものであれ、オードリーはチャーリーへストーリーの改変を要求しているのではないか?例えば前述のボビーのエピソードの差し替え要求。

一方、クーパー捜査官は17話、最終話で、これまでのストーリー(「誰か」が見ている夢)の根幹を成すローラ・パーマーと一連の事件の筋書きを破綻させてしまった。結果として、その過去が大きく書き換わることによって、ループの差異と呼ぶには甚だしい変化を孕む、新しい筋書きと、その未来を生じさせてしまった。
改編と呼ぶよりも、完全新作とでも呼ぶべき、新たな筋書き執筆も含めて、チャーリーをさらに多忙にしているのではないか?

本来、夢見る者はチャーリーには接触できないのだが、旧作から賢く、わがままに振舞い、考えるよりも行動が先走るオードリーなので、何らかの手段でチャーリーと接触できたものの、チャーリーは手に負えず、13話でオードリーを放り出してしまった(目覚めさせてしまった)、と解釈している。

一石で二羽の鳥を狙う

クーパー捜査官一人で

  • ローラ・パーマーの救出
  • ジュディ到達

を達成することを示唆しているのではないか?

とはいえ旧作ローラ・パーマー事件は未然に防ぐことができたものの、ローラ・パーマーは消失してしまった。そのまま新ループへ突入したクーパー捜査官は、劇中で語られることはないものの、当初、期待した通りではなさそうな展開で結末を迎える。
新シリーズを待て、ということか。

他にも未回収の伏線らしきものがある。

  • セーラ・パーマーの存在

 ローラ・パーマーの消失は、何らかの妨害(例えばセーラ・パーマー)によるものか?

  • 新ループの年代 

 フィリップの行先設定ミスか?フィリップは「ここは滑りやすい」と言っていた。

旧作同様、これから何度も見たくなる作品だった。
新作の所見はTSUTAYAのレンタルで済ませたのだが、繰り返しの視聴のため、DVDを購入せねばなるまい。

最後にオマケ

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